2018年5月28日月曜日

ミステリマガジン2018年7月号《おしりたんてい&バーフバリ特集》に「バーフバリ音楽ガイド」を寄稿しました&同号よりコラム新連載を始めます



【ミステリマガジン2018年7月号目次】
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013894/



 ミステリマガジン2018年7月号「特集:おしりたんてい&バーフバリ」が5月25日に発売されました。IQ1104を誇る当代随一の探偵尻紳士と、圧倒的なカリスマを誇る王をフィーチャーした驚天動地の二大特集号。バーフバリ特集ではインタビュー、レポート、座談会、エッセイの他、バーフバリ二部作の字幕翻訳を担当された藤井美佳さんのテキストや、バーフバリの前日譚小説『The Rise of SIVAGAMI』のレビューもあります。私は「バーフバリ音楽ガイド」を寄稿しております。以前よりブログで公開している「バーフバリ ヴォーカルアルバム&サウンドトラック徹底攻略の手引き」を誌面用に再編集した2ページのテキストです。これからバーフバリに触れる方はもちろん、よりディープにバーフバリに触れていきたい方の手引きにもなれば幸いです。ブログ版も引き続き公開しておりますので、併せてご活用ください(公式で公開されている劇中曲・劇伴曲へのリンクを一覧にしています)。
http://camelletgo.blogspot.jp/2018/01/baahubali-music-complete-guide.html


【訂正のお知らせ】
 ここで一つ訂正があります。誌面版「バーフバリ音楽ガイド」本文中の「四月十一日より、日本のiTunes storeやAmazon MP3でも「王の凱旋」のテルグ語版劇中曲集の配信が開始された」の部分は丸ごとスルーして下さい。つい先日、両ストアでテルグ語版の音源の配信が停止となりました。作曲者表記や(C)表記がM・M・キーラヴァーニやLahari Musicではないこと、また、「伝説誕生」のテルグ語版劇中曲集の方は配信されていないなどの不自然な点があり、正式な配信案件ではなかったものと思われます。改めてiTunes storeやAmazon MP3でテルグ語版楽曲の配信がされるのかは、現時点では不明です。以上、訂正申し上げます。


 そして同号より、ミステリ&音楽コラム「ミステリ・ディスク道を往く」の連載を始めます。連載第1回は「横溝正史作品を《聴く》」。こちらもどうぞよろしくお願いいたします。



【honto】
https://honto.jp/netstore/pd-magazine_29066803.html

【Amazon】
https://www.amazon.co.jp/dp/B07BZB64JR

【楽天ブックス】
https://books.rakuten.co.jp/rb/15490232/


【余談】







《過去記事》
エイドリアン・マッキンティ『コールド・コールド・グラウンド』のレビューを早川書房公式noteに寄稿いたしました

ミステリマガジン2018年1月号「特集:ミステリが読みたい!」に、2017年周辺ジャンル総括記事を寄稿しました

ミステリマガジン2017年11月号「幻想と怪奇 ノベル×コミック×ムービー」にコラムを三本 寄稿いたしました

ミステリマガジン2017年9月号「シャーロック・ホームズ & コリン・デクスター」特集にディスクガイドを寄稿いたしました

ミステリマガジン2017年7月号特集「このミステリ・コミックが大好き」のコミックガイドに参加&コラムを寄稿いたしました

ミステリマガジン2017年5月号【北欧ミステリ特集】に「北欧ミステリDISC SIDE A&B」を寄稿いたしました

2018年5月22日火曜日

映画「ピーターラビット」雑感


http://www.peterrabbit-movie.jp/


 映画版「ピーターラビット」を観ました。恨みはパワー! 憎しみはやる気! といわんばかりに動物と人間がガチで殺意をぶつけ合い、それでいて「破壊」と「再生」の物語でもある。家族で観るパワーヴァイオレンス映画としても、ピーターラビット映画としても申し分なく、期待に違わぬ面白さでした。実写&CG映画ですが、劇中の「爆発」はCGではなく、実際に火薬を使用したそうな。しかしエクストリームにブッ飛んでいるようで、原作への目くばせもしっかりと感じられる内容になっています。『ピーターラビットのおはなし』『ベンジャミンバニーのおはなし』のストーリーもある程度ベースにしているし、絵本シリーズで描かれているウサギ以外のキャラクターも数多く登場するし、ヒロインのビアには原作者であるビアトリクス・ポターが投影されています。どうかしていると思える凄まじいバランス感。興業的にも悪くないようなので、「ピーターラビット2」が2020年2月全米公開予定とのこと。





 ところで、トーマス・マグレガーがブラックベリーアレルギーだと知ったピーターラビットたちが口にベリーを打ち込んでアナフィラキシーショックを起こさせるシーンが海外で物議を醸して配給が謝罪したというニュースが2月にあり、カットがあるのではないかと気になっていたのですが、カットはなかったです。当該シーンに至るまでにエクスキューズがあり、その上で「だがヤツはマグレガーだから」と一線を超えるという展開になっています。とはいえ相当に凶悪なことに変わりはなく、抗議が出たのはもっともだと思いますが。その一方で、作劇的には人間対動物の倫理観をはるかに超越した抗争のエスカレートの途上のワンシーンであるのと、双方に決定的な展開が訪れる引き金ともなる重要な転機でもあるので、カットしようにもカットのしようがないとも思いました。ショック症状を起こしたマグレガーが、即座にエピペン(自己注射薬)を打ち込んで倒れこむくだりは、ドーナル・グリーソンの迫真の演技も相まってかなり生々しいです。劇中の台詞にもありましたが、「これはおとぎ話ではない」ので、あのシーンを通して「絶対に真似するなよ」と啓蒙へつなげることも含め、「家族で観るパワーヴァイオレンス映画」といえます。



愛蔵版 ピーターラビット全おはなし集(改訂版) (ピーターラビットの絵本)
ビアトリクス・ポター
福音館書店
売り上げランキング: 47,565

http://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=1084

 映画の副読本としては、もちろん『ピーターラビット全おはなし集』をオススメいたします。これ一冊で映画に出てくる輩をばっちり把握できます。ちなみに、ピーターラビットの1903年の第5刷で削除された数点の挿絵のうちの一つが、マグレガーおばさんにパイにされてしまったピーターのお父さんが食卓に出される図だったということが、あとがきに書いてあります。



映画劇中に出てくるウサギ以外のキャラクター。
http://www.fukuinkan.co.jp/search.php?series_id=85

『あひるのジマイマのおはなし』
『まちねずみジョニーのおはなし』
『こぶたのピグリン・ブランドのおはなし』
『ティギーおばさんのおはなし』
『キツネどんのおはなし』
『ジェレミー・フィッシャーどんのおはなし』


 映画ではどの動物もそこそこに仲が良さげでしたが、原作ではキツネとアナグマはどちらも動物たちやピーターラビット一家にとっての天敵的存在ですし、『キツネどんのおはなし』ではキツネとアナグマが死闘を繰り広げています。また、電流フェンスを思いっきり齧っていたハリネズミのティギーおばさんは作中随一のエキセントリックなキャラクターですが、原作『ティギーおばさんのおはなし』では仕事熱心な洗濯屋さんです。


【インタビュー】『ピーターラビット』ウィル・グラック監督が明かす裏話 ─ 主演ドーナルやマイク・シノダにまつわるアレコレも
(from THE RIVER|2018.05.18)





 ピーターラビットの音楽について。まず、LINKIN PARKのマイク・シノダのヒップホッププロジェクトであるFort Minerが2005年に発表した楽曲「Remember the Name」が、この映画のための2018年版として使用されているというのは大きなトピックです。ハリウッド・ボウルで開催されたLINKIN PARKのトリビュート・コンサートで監督がマイクに会った際にオファーをもちかけ、快諾を得て、歌詞はマイクと監督の共作の形でリライトされています。また、日本語吹替版では元SOUL'd OUTのDiggy-MO'が歌っており、ラップ制作で大神:OHGAも参加しています。





 そして劇中曲リストがこちら。Fort MinerのほかにもVampire Weekend、RANCID、Basement Jaxx、Portugal the Man、Big Country、デイヴ・マシューズ・バンドなどが選曲されており、かなりイカしています。この部分を見ても、本作が単なるKAWAII映画ではないことがうかがい知れます。オムニバスアルバムとしてのCDリリースや配信販売はない(ジェームズ・コーデン「I Promise You」とドミニク・ルイスのスコア「Peter Rabbit Suite」の2曲のみしか配信販売されていない)のですが、実はspotifyのColumbia Recordsのプレイリストで、全曲ストリーミングで聴くことができます。






Peter Rabbit (Original Motion Picture Score)
Madison Gate Records (2018-04-13)
売り上げランキング: 1,911


 インストゥルメンタル・スコア担当のドミニク・ルイスは、最近ではドラマ「高い城の男」のメインコンポーザーを務める人物。ハンス・ジマーのリモート・コントロール・プロダクション周辺の仕事や、ヘンリー・ジャックマンとの仕事も多く、「シュガー・ラッシュ」「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」「ベイマックス」「キングスマン」などの追加スコアも手がけています。

2018年5月20日日曜日

vaporwaveを装うチリのDIYジャズ・ロック/フュージョン系マルチプレイヤー Varra



 ある日、bandcampで「progressive rock」タグで検索すると、vaporwaveめいた装いのチープなアルバムジャケットが出現。軽い悪ふざけかと思いきや、聴いてみるとこれが実にイイ感じのジャズ・ロック/フュージョンで見事にしてやられてしまった。制作者はチリ出身のVarraというマルチプレイヤー。彼がYouTubeで活動を開始したのは2015年5月。一番最初に投稿した楽曲が、ストリートファイターIIのサガットのテーマのカヴァーというあたりも印象的なものがある。その後、数曲のフュージョンデモ曲を皮切りに、瞬間芸、「Dat Boi」(2016年ごろに流行ったインターネットミーム。一輪車に乗ったカエル)やvaporwaveをネタにした小品、Smash Mouth「All Star」のジャズ・ロックアレンジ、ゼルダの伝説 神々のトライフォーストワイライトプリンセスの楽曲のプログレアレンジなどを好き放題に投稿している。オリジナル曲はコンパクトな習作と見せかけてメロディが光る瞬間がそこかしこにあり、CGアニメーションと独自のセンスを駆使した珍妙なMV(楽器がレースをしていたり、骸骨がドラムを叩いていたり、変なオッサンが踊っていたり、アライグマの雑コラがギターソロを弾いたりetcetc)といい、隠しきれない才能がジットリにじみ出ている。楽曲はこれまでに2枚のコンピレーションアルバム『Varra』『Varra II』にまとめられているほか、今年5月には4曲入りのEP『ROCC music (音乐摇滚) 』を投げ銭でリリースしている。生暖かく追いかけたい。patreonのアカウントもあり、サポーターを常時受けつけている。








https://www.youtube.com/user/penegordo666/
https://www.facebook.com/musicofvarra
http://www.patreon.com/varra

2018年5月14日月曜日

elmobo『Double Kick Heroes Vol.1 (Original Game Soundtrack)』(2018)

 海外で定期的に開催されている数日間のゲーム制作イベント「Ludum Dare」の2015年12月開催の第34回でプロトタイプが生み出され、好評とフィードバックを獲得したフランスのHeadbang Club開発によるシューティングゲーム「Double Kick Heroes」。荒廃した終末世界を舞台に、「ガンデラック」に乗り込んだメタルバンドが襲い来るゾンビ軍団をギンギンに演奏しながらガスガス撃ち殺しまくるという、パワーメタル(物理)なリズムシューティングゲームです(プレイヤーの好みの楽曲でゲームをプレイすることも可能)。同年末にSteam Greenlightでリリースされ、その後2017年8月にドイツのgamescomのインディーゲーム賞を獲得。2018年4月よりSteamで早期アクセスが開始されました。日本語ローカライズは架け橋ゲームズが担当しています。





 同作のコンポーザーであり、ギターとヴォーカルも自ら担当している「Elmobo」ことフレデリック・モッテ氏はゲームミュージックシーンとメタルシーンの双方で実績を残している才人。80年代より「Moby」の名でデモシーンに参加し、90年代よりゲームミュージックを作り続け、「パックインタイム」「ナイトメア・クリーチャーズ」「Bakugan: Rise of the Resistance」(爆丸バトルブローラーズの北米版ソフト)など多数のタイトルを手がけてきた大ヴェテランである一方、プログレッシヴ・メタル・バンド「Plun-In」でも活動を展開しており、Bumblefoot(ロン・サール)のフランスツアーのサポートメンバーに抜擢されてもいるテクニシャン。Plug-Inの2011年のアルバム『Hijack』ではバンブルフットのほか、アンディ・ティモンズ、FREAK KITCHENのマティアス・エクルンド、SOILWORK、SCARVEのシルヴァン・コードレー、MÖRGLBLのクリストファー・ゴディンなどのテクニシャンがゲスト参加した超強力盤です。2004年にはレコーディングスタジオ「Conkrete Studio」を構え、多くのバンドのミキシングやマスタリングも手がけてもおります。







 Steam Greenlightでのリリース時には5曲を収録したサウンドトラック(「Ludum Dare」の期間内に合わせ、作曲・レコーディング・ミキシング・マスタリングを72時間内で完了させています)が投げ銭でリリースされていましたが、このたびの早期アクセス開始に伴い、28曲(うちインストゥルメンタルver.が5曲)収録のサウンドトラック第一弾がシアトルのゲームミュージックレーベル Materia Collectiveよりリリースされました(正式リリース時には第二弾がリリースされることでしょう)。チップチューンメタルはもちろん、インダストリアル/エクストリーム/スラッシュ/グルーヴメタルもelmobo氏にとってはお手のものであり、まさにメタルジャンルのデパート状態。さらにPLUG-INをはじめ、LOKURAH、SAMSARA CIRCLE、HELL IN TOWN、ANTHEUS、GOROD、THE FUNDAMENTAL WISDOM OF CHAOSといった欧州メタル/ハードコア系バンドのギタリストやヴォーカリストが多数客演しているのも大きなポイント。elmobo氏の人脈の広さをうかがわせてくれます。ちなみに、SAMSARA CIRCLEのオッリ・サムサーラが作詞とヴォーカルを担当した「Die Untoten」は思いっきりラムシュタイン風であり、フランスのアヴァンメタルバンド THE FUNDAMENTAL WISDOM OF CHAOSのサブ・エルヴェニアが訳詞とヴォーカルを担当した「Don't Bite My Butt」は(妙な)日本語詞の楽曲になっています。



http://doublekickheroes.rocks/
http://www.elmobo.com/