2017年12月3日日曜日

GROUP 87『Group 87』(1980)


http://isham.com/
http://www.imdb.com/name/nm0006142/

「ネバー・クライ・ウルフ」(1983)を皮切りに、「リバー・ランズ・スルー・イット」(1992)、「ブレイド」(1998)、「ブラック・ダリア」(2006)、「ミスト」(2007)、「ザ・コンサルタント」(2016)など、数々の映画劇伴を手がけるコンポーザーであり、1990年にリリースしたソロアルバム『Mark Isham(幻想秘夜)』で1991年にグラミー賞のニューエイジアルバム部門を、テレビドラマ「EZ Streets」のメインテーマ音楽で1997年にプライムタイム・エミー賞を受賞しているトランペット奏者/シンセサイザープログラマーのマーク・アイシャム。彼が1980年にレコーディングしたバンド「グループ87」のアルバムが、11月末にソニーミュージックのジャズ/フュージョン1000円シリーズで期間限定再発しました。かつて2000年に一度だけ海外でリマスター再発がされましたが、その後長らくプレミア化していただけあって、今回の日本初CD化はまたとないチャンスであります(音源自体は2000年のリマスター音源を使用)。


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Group 87
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 DEVOのマーク・マザーズボウ、Pop Will Eat Itselfのクリント・マンセル、Apparat Organ Quartetのヨハン・ヨハンソン、RED HOT CHILI PEPPERSのクリフ・マルティネスなど、バンドマンから本格的に映画音楽の道に進み、ひとかどのポジションを築くミュージシャンは今となってはそう珍しくないですが、アイシャムの場合はウィンダム・ヒルやECMレーベルとのかかわりや、アート・ランディやファラオ・サンダース、ヴァン・モリソンやデヴィッド・シルヴィアン、デヴィッド・トーンらとの共演など、単一ジャンルで括ることのできない活動があり、なかなかにユニークな立ち位置であります。このGROUP 87も、パトリック・オハーン(bass)、ピーター・マウニュ(guitar, keyboard, violin)、テリー・ボジオ(drums)、ピーター・ウルフ(piano)といった、フランク・ザッパやビリー・コブハムのバンドで鳴らした錚々たるメンバーで構成されています。ただ、基本メンバーはアイシャム、オハーン、マウニュの三人であり、ボジオとウルフはあくまでサポートメンバーとしての参加だったようです(レコード会社の思惑としては五人組としてデビューさせたかったようですが、そうは問屋がおろさなかった模様)。

 インスピレーションとなったのはブライアン・イーノやテリエ・リピダル、TALKING HEADSやWEATHER REPORTとのことですが、プログレッシヴ・ロックが下火となり、ジャズ/フュージョンがさらなる台頭をみせはじめる1980年といういわゆる端境期であることもポイントでしょう。「Magnificent Clockworks」「Moving Sidewalks」におけるポップなフュージョン・プログレ感。「Sublime Feline」のヘヴィ・ジャズ・ロック路線。さらに「Frontiers: 1856」「While The City Sleeps」ではニューエイジミュージックの肌触りもあり、かなり絶妙なバランスで成り立ったアルバムであることがわかりますし、本作から数年後にアイシャムがウィンダム・ヒルからソロアルバムをリリースする布石にもなっているともいえます。ジャンルが多様化し、細分化した今なら、より広く受け入れられるサウンドではないでしょうか。そういう意味でも、本作は「買い」です。

 その後、ボジオが在籍するMissing Personsに参加するためにグループからオハーンが脱退、アイシャムと同様にヴァン・モリソンのアルバムでプレイしていたドラマーのピーター・ヴァン・フックを新メンバーとして迎え、1984年に二枚目のアルバム『A Career In Dada Processing』をリリース。こちらはよりストレートなニューウェイヴ/シンセポップに寄せた内容でしたがヒットにはつながらず、ほどなくしてグループはその活動を終えます。その後、ピーターはMike + The Mechanicsに加入。このあたりも時代を感じさせます。


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 GROUP 87解散後のアイシャムの活動には、自らのミュージシャンキャリアの出発点ともいえるRubisa Patrolのアート・ランディ(70年代後半にECMからリリースされた『Rubisa Patrol』『Desert Marauders』の二作にアイシャムは参加しています)と連名で発表した『We Begin』(1987)。また、デヴィッド・トーンがECMよりリリースしたソロアルバム『Cloud About Mercury』(1987)にトニー・レヴィン、ビル・ブルーフォードと共に参加しています。ECMのカタログは先ごろストリーミング配信が一斉解禁されたこともあり、この機会にぜひ聴いてみてください。