2017年8月19日土曜日

2017年8月19日(土)「VGM SPARK STAGE1 【源平討魔伝・激奏禄】」@吉祥寺Club SEATA レポート



https://t.livepocket.jp/e/vgmspark1


今回のイベントを一言で言いあらわしますと


 「ありがたや」


これに尽きます。


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【O.T.K】


 1995年結成、活動歴20年を超えるゲームミュージック(とY.M.Oの)カヴァートリオ。実はお目にかけるのは今回初めてだったのですが、年季と熱気のこもったパフォーマンス(と寸劇)はこりゃすごいという印象。キーボード、ベース、ドラムスのバンドサウンド+打ち込みとクロスオーヴァーさせ、変拍子とキメがバリバリの楽曲群をハードなパフォーマンスで弾きこなす。選曲は、「ローリングサンダー」「キングオブキングス」「サイバースレッド」「アサルト」「F/A」「バラデューク」「モトス」など。バンドアレンジで聴く「キングオブキングス」も実にイイものですね。



【hally [VORC]】


 豊富な知識と膨大な資料の渉猟、そして関係者への取材をまとめた大変な労作であり、チップチューン史の黎明から興隆を知るうえで格好の一冊である『チップチューンのすべて All About Chiptune』を今年五月に上梓されたhally氏によるファミコン実機DJは、中潟氏が手がけられたファミコンタイトル楽曲メドレー(この日のためのスペシャルセット)と、バトルガレッガ楽曲メドレーの二本立て。現在のチップチューン技術で奏でられる「暴れん坊天狗」曲がやはりエグかった。ループをほうっておくと際限なく一音ずつ上がっていく仕様のステージ選択BGM「Verge of Danger」は限りなくドープだし、ハイスコア時BGMであるファミコンテクノ「Delta Rap」はやはりアガります。



【ファミ箏】

 箏×3、三味線×1、尺八×2の編成による和楽器ゲームミュージックグループ。オープニングは「戦場の狼」から始まるカプコンメドレー。「ロックマン」では途中で尺八によるカーソル音再現、メニュー画面でのE缶回復も入れているという芸の細かさ。「暴れん坊天狗」からはまさかの「Strontium 90」というシブい選曲。原曲のおどろおどろしさが見事に倍化しておりました。ゲームボーイ版「平安京エイリアン」の一連の楽曲アレンジもまことに雅な印象。オープニングからエンディングまでを演るという趣向で15分をゆうに超える「源平討魔伝」メドレーは、オール和楽器の響きによる編曲の妙もさることながら、より一層、諸行無常の響きがありました。もしや「だじゃれのくに」も? と思っていたら、しっかりだじゃれ入りで演られており、流石、ぬかりがない。ありがたやありがたや。ラストは、「レイブレーサー」の“Kamikaze”と、「妖怪道中記」をセットで。



【中潟憲雄 with AQUA POLIS】

 トリはもちろんアクアポリス。2月の東京ゲーム音楽ショー2017から半年ぶり、再結成後二度目となるライヴ。ラインナップは中潟氏(keyboards)、桜井良行氏(bass)、三苫裕文氏(guitar)、川上達朗氏(drums)。一曲目は東京ゲーム音楽ショー2017でも披露されていたプログレッシヴ・フュージョンチューン「夜明け」。続く「サンダーセプター」は、クラシックのフィールドのみならずゲーム音楽の演奏参加や、東京ゲーム音楽ショーやゲームタクトにも出演されているヴァイオリニストの松原まりさんを迎え、さらにキレを増したアレンジで展開。ドラムスの川上氏の知人でもある梅田NORI氏をヴォーカルに迎えての「超絶倫人ベラボーマン」は、NORI氏のシャッキリしたキャラクターと朗々たる歌声で強烈な印象。続けて、弓達公雄氏作詞によるフォークソング「方眼紙の唄」も、NORI氏が担当。また、前回の東京ゲーム音楽ショーにはスケジュールの都合により来られなかった小野浩(Mr.ドットマン)氏が「二人の景清」を伴ってステージに上がられていました。メガドラアイドルこと愛沢めみさんの(夏コミには間に合わなかった)新作コスプレROMに提供された書き下ろし提供曲「Spages」は、シンセサイザーを全面に押し出した、80年代のアクアポリスのテイストも感じさせる壮大な仕上がりの一曲。

 ここで、ドラムスが菅野詩郎氏に代わり(ドラムのセッティング中の中潟氏のMCでは、レアな「未来忍者」販促ポスターがステージに登場する一幕も)、ハイライトである「真組曲 源平討魔伝」へ。CDで幾度となく聴いておりますが、それでもやはり生のパフォーマンスは言わずもがなの熱量の塊。菅野氏のドラムはやはりおそろしくパワフルであります。アンコールは、阿部隆大氏とのユニット ACRYLICSTABのヴォーカリストであるUyuさんを迎えての「ワンダーモモ」。オリジナル版はTAKA&まさごろの二人がキュートパートとシャウトパートをスイッチングする形でしたが、Uyuさんが一人で両パートを歌いこなされており、素晴らしいヴォーカルパフォーマンスでした。歌詞が新たに書き下ろされていたところもポイント。オーラスで、ロウソク型ペンライト(物販アイテム)が客席から一斉に振られましたが、形が形だけになかなか異様な光景になっていました(笑)。アンコールはさらにもう一曲用意されており、満を持しての「未来忍者」。再び松原まりさんを迎えてのパフォーマンスで締めくくられました。

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会場物販ラインナップのひとつ、景清の扇子






源平討魔伝の30年、そしてアクアポリスの再始動 『源平討魔伝~参拾周年記念音盤~』

東京ゲーム音楽ショー2017: 中潟憲雄氏LIVE、菊田裕樹氏LIVE 覚え書き

中潟憲雄・大久保高嶺『暴れん坊天狗音楽集』

2017年8月17日木曜日

ボトムズシリーズの作曲家が、ボトムズ以前に手がけたジャズ・ロックアルバム、本邦初CD化 ― 乾裕樹 & TAO『砂丘』(1979)

砂丘
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 2017年はカシオペアが結成40周年、PRISMと松岡直也のアルバムデビュー40周年ということで、ワーナーミュージックが国内フュージョンの廉価盤再発キャンペーン「J-FUSION 40th ANNIVERSARY SHM-CD COLLECTION 1300」を4月から7月にかけて四か月連続で展開しておりました。その第四弾にはヴァイオリニストの篠崎正嗣氏の『NASA=MASA』(1980)や、四人囃子の元キーボーディスト 茂木由多加氏の1980年の『フライトインフォメーション』(1980)などの初CD化作品がラインナップされております。この『砂丘』も本邦初CD化タイトルの一つ。70年代に『Sony Sound Adventure』『Space Fantasy』などのシンセサイザーのデモンストレーションアルバムに参加し、80年代にフュージョンバンドのカリオカに加入。EPOや谷山浩子などの編曲や、アニメ『まいっちんぐマチコ先生』『装甲騎兵ボトムズ』『蒼き流星SPTレイズナー』などの主題歌や劇伴を手がけたキーボーディスト/作編曲家の故・乾裕樹氏が、「TAO」との連名名義で1979年に発表したアルバムです。

 このTAO、ワーナーのサイトやCDの帯のインフォメーションには「『銀河漂流バイファム』を手掛けるTAO~」とあり、その記述をうっかり信じてしまったのですが、調べてみるとそのTAOとはまったく別であることがわかりました。……というのも、1983年に『銀河漂流バイファム』の主題歌「HELLO, VIFAM」「NEVER GIVE UP」を手がけたヴァイオリン・ロック・バンド TAOが結成されたのは70年代ではあるのですが、デヴィッド・マン、関根安里、岡野治雄、野澤竜郎の四人のメンバーの名前は本作のクレジットのどこにもありません。本作の演奏者にはシュガー・ベイブやバイバイ・セッション・バンドの上原裕(drums)、鈴木茂&ハックルバックの田中章弘(bass)、パラシュートの今剛(guitar)、そして本田俊之(sax)、村上秀一(drums)、佐藤正美(acoustic guitar)、ペッカー(percussion)、ヴァイオリン奏者、チェロ奏者などがクレジットされています。このTAOというのは、あくまでゲストミュージシャンも含めてのレコーディングバンドに便宜的につけられたものだったのでしょう。ワーナー側からはこの情報的な大ポカに対して今のところ特に何もアナウンスがないのですが、誤認させたままでは色々とマズいのではないでしょうか……。

 ともあれ、アルバムの内容はまことに素晴らしいの一言。ドビュッシーの「En Bateau(小舟にて)」のアレンジや、ピアノ&シンセサイザーによる透明感あふれる小品「砂丘」も含めた六曲の楽曲は、エキゾチックなムードをたたえたインストゥルメンタルの傑作です。カリオカのスムース・ジャズのテイストにももちろん通じますし、プログレッシヴなジャズ・ロックとしてもスリリングに仕上がっています。シンセサイザープログラミングに松武秀樹氏のクレジットが確認できるところもポイントでしょう。『Space Fantasy』(1978)収録の「エンジェルダスト」(「カンツォネッタ」原曲)や、カリオカの『DUSK』(1983)収録の「Never Ending」(「いつもあなたが」原曲)など、乾氏が別のところで手がけた楽曲がボトムズの楽曲としてリメイクされることがあるのですが、本作の一曲目「Solar Plexus」もそのケースに当てはまります。同曲は、ボトムズの「クメン編」の劇伴「Jungle Ride」の原曲でもあります。廉価盤とはいうものの、完全限定盤ゆえ、再プレスの可能性はほぼないといっていいでしょう。最低野郎はこの再発の機を逃さないように。

2017年8月13日日曜日

源平討魔伝の30年、そしてアクアポリスの再始動――『源平討魔伝~参拾周年記念音盤~』(2017)

源平討魔伝~参拾周年記念音盤~
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 感激のリリースでありました。アーケード版とファミコン版の音源、ナムコミュージアムVOL.4のゲームルームBGM、高橋弘太氏、細江慎治氏、増渕裕二氏による各アレンジヴァージョン、1988年7月27日に聖蹟桜ヶ丘で行われた、TBSのラジオ番組「ラジオはアメリカン」のイベントで演奏された「組曲 源平討魔伝」「ラストテーマ・ニューバージョン」の音源の再収録。そして、再結成を果たした中潟憲雄氏率いるプログレッシヴ・ロック・バンド アクアポリスによる新録アレンジメドレー「真組曲 源平討魔伝」が収録されたCDに、源平プロジェクトが撮影した実写版、雨宮慶太氏の演出によるプロモーション版映像が収録されたDVDがセットになったまさにスペシャルアイテム。(なお、PCエンジン版「源平討魔伝」「源平討魔伝 巻ノ弐」のBGMはクラリスディスクより2014年にリリースされた『HuCARD Disc In BANDAI NAMCO Games Vol.2』に収録されていることもあり、未収録です)。ブックレットも充実しており、先ごろ刊行された《GAMEgene》第三号のインタビューと併せることで永久保存版といえるものになっています。



GAMEgene Vol.3
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 中潟氏が中期SOFT MACHINE、ジョン・マーシャルがお好きだったというのは初耳でした。1972年のライヴアルバム『Live in Paris』の一曲目"Plain Tiffs"におけるジョン・マーシャルの八分の六拍子のビートがサウンドのイメージにあったとのこと(ところで、ブックレットのインタビューの記載では1971年となっていましたが、同作が録音されたのは1972年5月2日です)。「ようやく本当に自分が思い描くものになった」と語られていた「真組曲 源平討魔伝」は、さまざまなライヴやレコーディングに参加されている竹井誠氏の尺八と、大友良英氏(中潟氏とは高校のJAZZ研の同期だったそうです)のノイズギターもゲストで加わっての、15分以上に渡る圧巻のアレンジ。


Live in Paris
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 個人的な妄想をいささか広げる形になりますが、「エンディング」はKING CRIMSONも意識されているのではないかとずっと思っています。「混乱こそ我が墓碑銘となるだろう(Confusion will be My Epitaph)」「星ひとつなき聖なる暗黒(Starless and Bible Black)」といった詞が、ゲームのエンディングにおける「神様は死んだ 悪魔は去った 太古より巣食いし 狂える地虫の嬌声も 今は、はるか 郷愁の彼向へと消え去り 盛衰の於母影を ただ君の 切々たる胸中深くに 残すのみ 神も悪魔も降立たぬ荒野に我々はいる」のメッセージと共鳴しているような気がしてならないのです。「Epitaph」を歌ったグレッグ・レイクも、「Starless」を歌ったジョン・ウェットンもこの世を去り、諸行無常を痛感する次第ですが、復活を果たしたアクアポリスのこれからの活動にさらなる期待をしたいと思います。

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 最後に、アクアポリスのプロフィールについて、三年半前に書いたこちらの内容を改訂する形で以下に記しておきたいと思います。

【参考文献】
ヌメロ・ウエノ『ヒストリー・オブ・ジャップス・プログレッシヴ・ロック』(1994年/マーキー・ムーン刊)
剛田武『地下音楽への招待』(2016年/ロフトブックス刊)


 1980年の夏、早稲田大学のプログレッシヴ・ロック・サークル「イオロス」内で結成されたブリティッシュ・プログレ系のコピーバンドが母体となり誕生したアクアポリスは、同年12月に越谷のイベントでライヴデビューを果たし、1981年からは吉祥寺シルバーエレファントを拠点にライヴ活動を行うようになります。当時はアウターリミッツやKENSOとも共演していたとのこと。


《1980年》
中潟憲雄(keyboard)
桑原聡(bass)
渡辺幸一(guitar)
竹迫一郎(drums)






 当初はYESやKING CRIMSON、BRUFORDのレパートリーを演奏していたそうですが、次第にオリジナル曲の演奏も行うようになり、1981年8月にはバンドの代表曲であり、16分を超える大曲「アクアポリス組曲」がスタジオ録音されます。同曲は1994年にマーキー/ベル・アンティークからリリースされたオムニバスアルバム『伝説の彼方~東京シンフォニック・シンドローム』に収録(ちなみに、本CDには菅野詩朗氏が80年代に在籍していたバンド「GREEN」の楽曲も収録されています)。シンフォニックな広がりを持ったシンセサイザー・アレンジの上を、軽やかなバンドアンサンブルがテクニカルに押していく力作です。1982年からはラインナップが不安定になり、特にドラムスの入れ替わりが頻繁にあったもよう。


《1982年》
中潟憲雄(keyboard)
伴田宏(bass)from KALEIDOSCOPE
浜田龍美(guitar)
川上達朗(drums)
高橋直哉(drums)from 新月

《1982年7月~1983年4月》
中潟憲雄(keyboard)
桜井良行(bass)from HAL
浜田龍美(guitar)
竹迫一郎(drums)






 そして、1983年4月に発行された《マーキームーン》誌第12号の付録ソノシート(MM-0008)に、プログレッシヴ・フュージョン寄りの楽曲「El Dorado」が収録され、1985年8月には、モノリスコミュニケーションからリリースされた三枚組オムニバス『Progressives' Battle From East/West』(MN-14001~14003)に、よりシンセサイザーを前面に押し出した、三部構成の情緒的なシンフォニック曲「ノルウェーの印象 (夜明け・オスロの午後・白夜)」が収録されます。ちなみに1985年は、中潟氏がナムコで『モトス』『バラデューク』の楽曲を手がけられた年でもあります。






《1987年》
中潟憲雄(keyboard)
桜井良行(bass)
三苫裕文(guitar)
竹迫一郎(drums)


 1987年7月には、アラン・ホールズワースからの強い影響下にある三苫裕文氏にギターがチェンジするものの、中潟氏の仕事が忙しくなったため、その後しばらくしてバンドは活動を休止することになります。メンバーの竹迫氏と三苫氏はこの後、ジャズ・ロック・バンド「NOA」を結成して活動を展開(三苫氏はさらにその後プログレッシヴ・ロック・バンド「MONGOL」にも参加されています)。NOAは1996年以降、活動が途絶えていましたが(2007年に亡くなられたメンバーの飯嶋氏の追悼ライヴのため、2008年4月に一時的に再編)、2016年8月に本格的に再始動しています。現在のラインナップには桜井良行氏と、作編曲家であり、PRISMの現キーボーディストでもある渡部チェル氏が加わっております。

http://www.pjr-noa.com/






《2017年『源平討魔伝~三拾周年記念音盤~』》
中潟憲雄(keyboard)
桜井良行(bass)
三苫裕文(guitar)
菅野詩郎(drums)from KBB


 2017年2月25日に行われた「東京ゲーム音楽ショー2017」において、アクアポリスの約30年ぶりのライヴが行われ、歴代メンバー+αによる、新曲も交えたパフォーマンスが展開されました。そして8月19日には「VGM SPARK -STAGE1-【源平討魔伝・激奏禄】」にて、二度目のライヴが行われます。





東京ゲーム音楽ショー2017: 中潟憲雄氏LIVE、菊田裕樹氏LIVE 覚え書き

2017年8月7日月曜日

「キノの旅」イメージアルバム『キノなカノン~ゆっくりでアップテンポでなめらかな曲~』(2003)



 シリーズ第一作が刊行されて17年目を迎える『キノの旅 -the Beautiful World-』。今年に入ってコミカライズ企画が始動し、単行本第一巻が7月に刊行。さらに二度目のアニメ化(テレビシリーズ)も決定し、10月に放送が開始となります。旧テレビシリーズの最終話に登場したヒロインのCVを担当された悠木碧さん(この回が彼女の声優デビューとなりました)が、新テレビシリーズでキノ役を務めるというのも感慨深いものがあります(ちなみに、2016年の電撃文庫&ニコニコ動画のラジオドラマ企画で彼女はすでにキノを演じておりました)。


http://www.kinonotabi-anime.com/
http://kinonotabi.com


 改めて思ったのは、2003年の4月から7月にかけてWOWOWで全13話が放送された旧テレビシリーズでは音楽面での関連CDがかなり少なかったなということでした。そもそもアニメ本編は音響効果としての演出はあれど劇伴音楽はなかったためサウンドトラックCDそのものが出ておらず、また、ドラマCDも2002年に一枚しか出ていませんでした。同じ電撃文庫作品であり、その少し前にアニメ化した『ブギーポップは笑わない』は三枚の企画アルバムが出ていたことを考えると、なおのこと対照的に思えます。



キノの旅-the Beautiful World-  -記憶の国 Their Memories-(CD付き) (電撃文庫ビジュアルノベル)
時雨沢 恵一
メディアワークス
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 今回ご紹介する『キノなカノン』は、2003年12月に刊行された同作のビジュアルノベル第一弾『「記憶の国」-Their Memories-』に付属した音楽CDであり、『キノの旅』の現時点で唯一の公式イメージアルバムです。「パッヘルベルのカノン」のヴォーカルアレンジや、アニメ版エンディングテーマ「the Beautiful World」をふくめ全8曲を収録しており、作編曲・演奏は、アニメ「仙界伝 封神演義」(1999)や「妖しのセレス」(2000)などの劇伴を手掛けられた酒井良氏が担当。シンセサイザー多重録音によるアンビエントで無国籍風のインストゥルメンタルを中心にした「静のイメージ」で一貫して構成されています。「the Beautiful World」は、弦楽四重奏をバックに前田愛さんがやわらかに歌いあげるファンタジックなナンバーとして、今なお色あせぬ名曲です。また、「東の城門」「人々」には、「the Beautiful World」のメロディラインやストリングスが組み込まれているというちょっとした趣向もあり、ストーリーアルバムとしても、コンセプトアルバムとしても統一感のある仕上がりになっています。10年以上前に出た特殊な判型のCD付き書籍のため、今では古書店で見かけることもあまりなくなりましたが、ぜひともオススメしたいアイテムです。





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『キノなカノン~ゆっくりでアップテンポでなめらかな曲~』
[DMCG-30311|2003.12.25|メディアワークス]

01. 東の城門
02. 人々
03. 祈り
04. 祭り
05. 夜と朝
06. くりかえす (「パッヘルベルのカノン」より)
07. 西の城門
08. the Beautiful World


《STAFF》
作詞:村井さだゆき(M-06)
作曲:酒井良(except M-06)
編曲:酒井良


「the Beautiful World」
歌:前田愛
作詞:時雨沢恵一
補作詞:わたなべもも
作編曲 & synthesizer & programming:酒井良

NAOTO、伊能修(vl)
三木章子(vla)
大沢真人(vc)




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 以下、補足としての情報を。下川みくにさんが歌うオープニングテーマ「all the way」(作詞:何茶李/作編曲:Sin)と、前述の「the Beautiful World」のシングルは共に2003年6月にリリース。2005年2月に上映された劇場版第一作「何かをするために -life goes on.-」のエンディングテーマ「はじまりの日」(作詞:わたなべもも/作編曲:酒井良)は、同年3月にリリースされた前田さんのミニアルバム『night fly』のB面に収録されています。また、2007年4月に《電撃文庫ムービーフェスティバル》の一環として上映された劇場版第二作「病気の国 -For You-」のエンディングテーマ「Bird」(作詞・作曲:下川みくに/編曲:Sin)のシングルは同年3月にリリースされました。



all the way (「キノの旅」 OPテーマ)
下川みくに
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the Beautiful World (「キノの旅」 EDテーマ)
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night fly
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Bird(初回限定盤)(DVD付)
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 2003年3月にリリースされた『キノの旅 -the Beautiful World- サウンドコレクション』は、同年7月にメディアワークスからリリースされたPS2版ソフトのサントラ。作編曲は石井吉幸氏と加藤恒太氏の二人で、主題歌「セカイハカガヤク」のヴォーカルは霜月はるかさん。2005年に彼女のベストアルバム『あしあとリズム~Haruka Shimotsuki works best~』に収録されています。



キノの旅-the Beautiful World- サウンドコレクション
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あしあとリズム ~Haruka Shimotsuki works best~
霜月はるか
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 二次創作作品では、2002年にサークル「LITTLE WING」から、MANYOさんの作編曲、園田まひるさんのヴォーカルによる10曲入りイメージアルバム『REVERIE -サウンドスケッチ "キノの旅"』が制作されています。







2017年8月6日日曜日

マイリトルポニー第一世代のイタリア版イメージソングEP ― Marco Lamioni「Ponymusical」(1985)





 ずっと気になっていた「Ponymusical」を少し前に入手することが叶いました。1985年にイタリアでリリースされた、マイリトルポニーの「四曲入りEP」です。現在のマイリトルポニーは第四世代ですが、本作は第一世代。かつ、1985年ということはアメリカでテレビスペシャルの二本目「Escape from Catrina」が放送されたころであり、テレビシリーズ第一作目や劇場版第一作が放送される前です。アメリカの子供向けレコード専門レーベルである「Kid Stuff Records」からレコード/カセットでオーディオブックが出ていましたが、それとは別に、イギリスとイタリアではキャラソンを収録した企画EPが制作されました(イギリス版については後述)。イタリア版EPは、MONDO CANDIDOなどのプロデューサーであり、ヘクトール・ザズーともコラボレーション歴のあるマルコ・ラミオーニが手がけたというちょっとしたシロモノ。盤面は白と黒の二種類のプレスがあったようです。男女ヴォーカルによる、ドリーミーでソフトなポップソングが収められています。




『Ponymusical: Storie E Musiche Dall'Arcobaleno Dei Miominipony』

【Side A】

01. La Canzone Dei Miominipony
02. La Canzone Del Re Triste


【Side B】

03. La Canzone Della Zia Sirena
04. La Canzone Della Felicita





 マルコ・ラミオーニ(Marco Lamioni)は1970年代中期にINSIEMEというジャズ・ロック・バンドにギタリストとして在籍。その後、同バンドのベーシストだったニコラ・ベルヌッキオと共にフォーク・ロック・バンド CARTACANTAに在籍し、1980年にバンド唯一のアルバム『Il Tempo Delle Ciliegie』を発表しています。その後はソングライターやプロデューサーとして活動を続け、著名なところではボッサ/ラウンジ系グループのMONDO CANDIDOやGAZZARA(フランチェスコ・ガッザーラ)との仕事があります。ソロとしてもラウンジ・ポップのフィールドを中心に活動を展開し、2003年にソロアルバム『Slow』をリリース。他方では、1999年にフランク・ザッパ トリビュートアルバム『frank you, thank!』の第一弾に"peaches en regalia"のカヴァーを提供しているほか、ヘクトール・ザズーの2004年作『L'Absence』にゲスト参加などもしています。



Slow
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Marco Lamioni
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L'absence
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 ちなみに、二年後の1987年にはTillyやクリスティーナ・ダヴェーナによるイタリア語歌唱のテーマソングシングルがリリースされています。クリスティーナ嬢はイタリアにおけるアニメソングの女王であり、爆発的人気を博したイタリア実写ドラマリメイク版「愛してナイト」の劇中曲を歌っているのも彼女です。






【イギリス版EPについて】




 同じく1985年にイギリスではピクチャーディスク仕様のキャラソンEPが制作されていたのですが、こちらはポニーの玩具についている応募券を郵便為替とあわせて送ることで入手できたというノベルティアイテムだったようです(後にカセットテープでも出たとのこと)。全8曲。「マイリトルポニーのテーマ」「同 リプライズ」のほか、「アップルジャック」「バウ・タイ」「リケティ・スプリット」「ポージー」「チェリーズ・ジュビリー」「トッツィー」の6匹のポニーのキャラソンを収録しています。下記のサイト「Etherella.com」「The My Little Pony Scrapbook」に非常に詳しい情報が載っています。

http://www.etherella.com/scrapbook2/1985media.htm
http://www.etherella.com/scrapbook2/advert_pd.html



2017年8月5日土曜日

イギリス放送版パペットムーミンのサイケなサウンドが30年を経てサントラ化 ― Graeme Miller & Steve Shill『The Moomins』




 トーベ・ヤンソンが監修に参加し、ポーランドのアニメーションスタジオ「Se-ma-for」とオーストリアの「Jupiter Film」の共同で制作された、一話9分構成によるムーミンのストップモーション・パペットアニメは、ポーランド、オーストリア、ドイツの三ヶ国で1977年から1982年にかけて放送されました。日本では、1990年に全6シーズン78話が、1969年/1972年版アニメでムーミンを演じた岸田今日子の吹き替えでNHK BS2にて放送。2003年7月にはそのうちの36話分が日替わりで劇場公開され、2004年7月にDVD BOXがリリース。2012年3月には、松たか子、段田安則が吹き替えした50話分のエピソードがNHK BSプレミアムにて放送され、2013年6月にDVD BOXがリリース。2008年、2010年にはそれらのリメイク&再編集劇場版「ムーミン谷の夏まつり」 「ムーミン谷の彗星」が制作され、2009年、2015年にそれぞれ日本公開されています。そして今年12月には、劇場版第三作となる「ムーミン谷とウィンターワンダーランド」が日本でも公開予定です。また、チェコスロバキア生まれの作曲家/サックス奏者 エヴジェン・イリーン(Eugen Illin)と、ポーランド生まれのアンドレイ・リキッキ(Andrzej Rokicki)が手がけた劇伴は、日本では2003年にランブリングレコーズから三枚に分けてサントラCDでリリースされています。

Opowiadania Muminkow - IMDb

http://www.fuzzyfeltmoomins.co.uk/index.html






 前置きが長くなりましたが、今回クローズアップするのはイギリス放送版。イギリスでは1983年ごろより一話5分構成・全100話の形に編集されて放送され、俳優のリチャード・マードックがナレーションを務めたほか、グレアム・ミラースティーヴ・シルによるオリジナル劇伴に差し替えられています。放送当時はオフィシャルな形で音源化されることはありませんでしたが、2015年のレコード・ストア・デイに、イギリスの再発レーベル「Finders Keepers」からメインテーマが7インチシングル/ダウンロードの形でシングルカットされ、翌2016年には、レコード、CD、ダウンロードの形でサウンドトラックと、クリスマスシングル「The Moomins: Silent Night」が世に出ることとなりました。コレクターのツボをくすぐる発掘音源のリリースに定評のあるレーベルが、また一つイイ仕事をしたのです。






 グレアム・ミラースティーヴ・シルの二人の若者の共同作業によって自宅でつくりあげられたサウンドは一言で言うと「かなり節操がない」もので、アコースティック、サイケ、ニューエイジ、ポストパンク、ローファイテクノが無邪気に入り混じった、素朴なようで複雑な味わい。The Quietusが今年2月にグレアムに行ったインタビューによると、クラフトワークやブライアン・イーノ、ギャヴィン・ブライアーズ、そして「リーズ市立図書館のコレクション」などから影響を受けていて、さらにあらゆるインプットを無差別にとり込んで再加工するという「技術としてだけではなく、アイデアとしてのサンプリング」でスコアが生み出されていったとのこと。


「INTERVIEW: The Moomins Composer Graeme Miller」
(from The Quietus|2017.02.15)


 グレアムはその後、コンポーザーのみならず、より広範的なアーティストとしても活動を展開しております。また、今年の7月7日~9日には、イギリスで開催された「ブルードットフェスティバル」において、「ムーミン谷の彗星」の1983年版を、「Live Rescore」した形で放映したとのこと。また、スティーヴ・シルは80年代後半よりテレビプロデューサーとして活躍しており、テレビドラマ「デクスター~警察官は殺人鬼~」や「シカゴ・ファイア」「THE FLASH/フラッシュ」など数々の作品に携わり、2010年には「デクスター~警察官は殺人鬼~」でエミー賞監督賞を受賞しています。

2017年8月2日水曜日

リリース情報・備忘録 2017年7月



























































2017年8月1日火曜日

ミステリマガジン2017年9月号「シャーロック・ホームズ & コリン・デクスター」特集にディスクガイドを寄稿いたしました




http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013602/


 早川書房より7月25日に発売となりました、《ミステリマガジン》2017年9月号【特集:シャーロック・ホームズは永遠に】に、「ミステリDISC SIDE S(sherock)」 「ミステリDISC SIDE M(morse)」を寄稿いたしました。〈SHERLOCK〉と〈主任警部モース〉の主要なサウンドトラックについての各1ページコラム。どちらも人気シリーズだけに、CDのリリースにも事欠きません。ご参考になればさいわいです。









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《余談》













《過去記事》

ミステリマガジン2017年7月号特集「このミステリ・コミックが大好き」のコミックガイドに参加&コラムを寄稿いたしました

ミステリマガジン2017年5月号【北欧ミステリ特集】に「北欧ミステリDISC SIDE A&B」を寄稿いたしました