2017年2月9日木曜日

何回聴いたところで味はなくならない。あるいは左右というバンド ― 左右『スカムレフト スカムライト』『カンバセイション』(2015/2017)

スカムレフト スカムライト
左右
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カンバセイション
カンバセイション
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左右
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 あなたは左右を知っているだろうか。いや、おれはまだ前後不覚になってはいないよとかそういうことではなく、バンドの左右である。花池洋輝(vocal, bass, drums)と桑原美穂(vocal, guitar)による男女デュオ、それが 左右。結成は2010年、5曲入りデモを2011年に発表し、これまでに突然段ボール、PANICSMILE、eastern youth主催のライヴや、パスカルズの石川浩司氏とのセッションライヴなどに出演している。花池氏はベースを弾きながらドラムをプレイすることもある(ふと、吉田達也が脳裏に浮かぶ)。2015年に1stフルアルバム『スカムレフト スカムライト』をリリース。通販&ライヴ会場限定シングル"イエローヘイト"、『左右-ep』からの"神経摩耗節" "箱のうた"の各新録も含む全11曲。2016年末リリースの『カンバセイション』は、再び新録された"神経摩耗節"を含む8曲入りミニアルバム。YouTubeにあがっている彼らのMVに対して海外の人が「オー! ジャパニーズホワイトストライプス!」とコメントしていたのを見かけたが、タイプはだいぶ異なる。ルインズやあふりらんぽ、HELLAなど、キレッキレのデュオは世に数あれど、左右のキレ具合は三歩進んで二歩下がるとみせかけて四歩進むような、形容し難いものがある。一見トボけていてシュールなようで語感は鋭く、ポストパンク/ノーウェイヴ/ミニマルなサウンドとの噛み合わせもズバ抜けているし、ときにお経のようでも、ヒップホップのようでもあり、音のスキマすら味方につけている。妙な気まずさ、えも言われなさ、ディスコミュニケーションその他もろもろを引っ掛けながら突き刺さってくる。たとえば"なくならない"では、「何回噛んだところで 味はなくならない」のリフレインや、「壊れたことばでつくった歌の 味はすぐになくなった」「壊れたフリしてうたった歌の 味はすぐになくなった」のフレーズが恐ろしくこびりついてくる。かと思えば、"平和なのか"では不安混じりのなかにほのかな詩情を感じさせ、panicsmileの吉田肇氏やZAZEN BOYSの向井秀徳氏が激賞した"ばれている"ではストレートにポップなセンスも覗かせる。"クラスタ" "アドバイス"では温度低めの展開が徐々にトランスへといざない、幾度となく再録される"神経摩耗節"では、ソリッドな言語感覚がジュクジュクしたギターと相まってあらぬ方向に目覚めさせてくれる。極限までシンプルで削ぎ落としているようで、一筋縄ではいかない心地に満ちております。さあ、これであなたは左右を知ってしまった。めくるめく左右ワールドへどうぞ。


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https://www.youtube.com/channel/UCsWjt-ChVTw3Jclia8sXdAg