2017年2月23日木曜日

トボけたユーモアとゴッタ煮感のフレンチ・サイケ・ポップ集団 ― AQUASERGE『Laisse Ça Être』(2017)




 フランスのアクアセルジュは、フォーク・ポップ・シンガー フレデリック・ジーンのバンド HYPERCLEANのメンバーであった ベンジャミン・ギルバート (guitar)、ジュリアン・ガスク (keyboard) 、ジュリアン・バルバッガロ(drums)の三人によって2005年に結成されたサイケデリック・ポップ・グループ。ライヴではトリオのみならず、その時々によってクインテット、オクテットと編成を変えることも多々あり、バンドというよりはミュージシャンの集合体という立ち位置での活動を行っています。2009年に、それまでリリースしたEPやシングルの楽曲をまとめたアルバム『Un & Deux』をリリース。その後、オードリー・ジネステット(bass)と、ベンジャミンの血縁であるマノン(clarinet)が合流。2010年発表の2ndアルバム『Ce Très Cher Serge - Spécial Origines』では、ACID MOTHERS TEMPLEの河端一氏(彼らとは旧知の仲)やBen's Symphonic Orchestraのベノワ・ラルト、ベルギーのDAAUのブニ・レンスキらをゲストに迎え、そのスタイルにも多様性が見られ始めます。2014年にはマキシシングル『Tout arrive』と、3rdアルバム『A L'Amitié』を発表。ここにきてさらにヘヴィさを増し、レコメン/チェンバー・ロックの様相すら成してきました。




  クラシックなジャズやフレンチ・ポップ、映画音楽や電子音楽のエッセンスを特有のユーモアでくるんだ曲調やアレンジは、一見耳ざわりがよいようでどこか屈折していて、懐の広さが知れないたたずまい。セルジュ・ゲンズブールのアレンジャーでもあったアラン・ゴラゲールジャン=クロード・ヴァニエにも通じるしたたかなセンスも感じさせます。ちなみに、ジュリアン・ガスクはかのSTEREOLABのメンバーでもあり、ジュリアン・バルバッガロはオーストラリアのTAME IMPALAのライヴメンバーとして2012年から活動もしています。メンバーそれぞれの越境的な活動もまた見所でしょう。AKSAK MABOULのマーク・ホランデル主宰のレーベル「Crammed Discs」を通じて世界流通もされている『Laisse Ça Être』は、2016年のEP『Guerre』に続く4thフルアルバム。前作と比べると焦点をやや絞った内容ながら、軽やかにうねるブラス・ジャズ・ロック"Tour du monde"、カンタベリー・ジャズ・ロック風味な"Virage Sud"を皮切りに、ブイブイに歪ませたヘヴィ・サイケとラウンジ・ポップを気ままに行き来するかのような"Tintin on est bien mon loulou"や、かと思えば瀟洒な風が吹き込むミニマル・チェンバー・ポップチューン"Si loin si proche"が顔を出すなど、佳曲多し、です。




 「Interview – Audrey Ginestet from Aquaserge」
(from SFSONIC|2017.02.02)

http://aquaserge.com/
https://aquaserge.bandcamp.com/