2016年10月23日日曜日

〈となりのせきのますだくん〉シリーズのすすめ

 武田美穂さんの絵本『となりのせきのますだくん』を十数年ぶりに読み返し、第二作目以降の〈ますだくん〉シリーズも全作読みました。……実を言うと、シリーズだったということをつい最近まで知りませんでした(一作目の刊行と二作目の刊行の間には四年半ほどのスパンがあり、それで当時、うっかり見逃してしまっていたようです)。そんな自分が言うのもなんですが、全作オススメです。シリーズを通して描かれているますだくんとみほちゃんの関係性は、むしろ年を重ねた今読むと味わい深いものがあります。



『となりのせきのますだくん』
(1991年11月|えほんとなかよし12)

となりのせきの ますだくん (えほんとなかよし)
武田 美穂
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 第一作目。1993年度講談社出版文化賞絵本賞受賞。みほちゃんの視点では意地悪なますだくんは「怪獣」に見えるのですが、彼が「人間の姿」で描かれるラスト1ページは、大人になった今あらためて見てもハッとさせられます。テキストが少なめなのも、内気なみほちゃんの視点でのモノローグだから、と考えることもできなくもないですね。「みほちゃん」であることから察しがつくでしょうが、武田先生ご本人の実体験がベースとなっており、カバー折り返しの先生のコメントには、こうあります。

 わたしが小学校に入学して、一番さいしょにとなりのせきにすわった男の子が「ますだくん」でした。学校でさんざんいじめるくせに、学校からかえると、うちの門のまえで「あそぼーぜ」と、まっているヘンな男の子。あの「ますだくん」は、いまどうしているのでしょう。すてきなおとなになっているでしょうか。



『ますだくんのランドセル』
(1995年10月|えほんとなかよし37)

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 前作から四年半後に刊行された第二作目。一作目と比べると、二作目以降はコマ割が細かくなり、テキストもグンと増え、絵本という以上に漫画的な趣向になっているのもポイントです。ますだくんが憧れの赤色のランドセルを背負うまでの話であり、みほちゃんとの初めての出会いの話でもあります(また、ますだくんには お姉ちゃんが一人、お兄ちゃんが二人いるということもわかります)。ますだくんは赤色のランドセルに愛着と誇りを持っている一方で、みほちゃんは自分の意に沿わない青色のランドセルを背負っており、赤色のランドセルが羨ましいと思っています。男の子・女の子のそれぞれのランドセルの色の選択は昔よりも自由度が高くなってはいるようですが、それでも議論は今もなお尽きないようです。



『ますだくんの1ねんせい日記』
(1996年4月|えほんとなかよし43)

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 ますだくんが自分の日記を初公開するという導入で始まる第三作目であり、『となりのせきのますだくん』の続編。みほちゃん視点であった同作のエピソードを ますだくん視点で展開するという、ちょっとした倒叙的趣向であります。積極性と面倒見のよさにあふれる彼の視点からだと、情報量も格段に違ってきます。ますだくんの自信にあふれまくった言動と、それゆえに起こってしまう みほちゃんとの微妙な噛み合わなさに苦笑しつつも、最終的には微笑ましくなるのです。



『ますだくんとはじめてのせきがえ』
(1996年12月|えほんとなかよし46)

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 ざっくり言うと「なかよくケンカしな」といった感のある第四作目。ますだくんの積極性はやっぱりちょっとニガテだなと思いながらも、みほちゃんが思い切って自らの本音をほんのちょっとだけさらけ出す巻でもあります。そのシーンの構図は非常にエモーショナルであり、本作のハイライトと言えるのではないかと。



『ますだくんとまいごのみほちゃん』
(1997年12月|えほんとなかよし53)

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 第五作目。おもな舞台は学校から街へと移り、タイトル通り みほちゃんが迷子になる話なのですが、一方で本作は彼女の憧れの存在である友人 ようこちゃんの話でもあり、また、クラスメイトとの友情、ちょっとした冒険と成長が描かれた話でもあります。

 ところで、武田先生はNHKの人形劇「ざわざわ森のがんこちゃん」のキャラクターデザインも担当されているんですよね。また、ますだくんは2009年に発売された『武田美穂の四字熟語かるた』でもメインキャラクターを張っています。

武田美穂の四字熟語かるた ([かるた])
武田 美穂
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