2016年4月5日火曜日

90年代日本アニメへの愛を込めた、色彩豊かな一大ポップアルバム ― Wilbert Roget,II『Beyond Libra』(2016)




 ウィルバート・ロジェIIは、アメリカのゲームミュージックコンポーザー。2008年にルーカスアーツに入社し、 「Star Wars: The Force Unleashed」(2008)、MMORPG「Star Wars: The Old Republic」(2011)、「Monkey Island 2: LeChuck's Revenge」(2010)などの制作に参加。また、2013年にルーカスアーツ閉鎖による開発凍結で幻の作品となってしまった「Star Wars: First Assault」では、ロンドンシンフォニーオーケストラを起用し、アビー・ロード・スタジオ録音でスコアを制作していたようです。その後はフリーランスでの活動にシフトし、「ソウルキャリバーV」(2012 ※オーケストレーションで参加)、「ララ・クロフト アンド テンプル オブ オシリス」(2014)や、先ごろ別のデベロッパーに開発が引き継がれた「Dead Island 2」のサウンドを担当。オーケストレーションアレンジに定評があり、数々のゲームミュージックアワードへのノミネートもされるなど、近年とみに注目を集めるコンポーザーの一人でもあります。また、彼は海外のゲームミュージックコミュニティ「OverClockedRemix」でbustatunez名義でアレンジを投稿もしているほか、サウンドソフトフェア会社 Impact Soundworksの音源サンプルの制作に関わってもいます。




 久石譲、菅野よう子から多大なる影響を受けた彼は、プロのコンポーザーとして活動を始めたころよりアニメのサウンドトラックを制作したいという構想を抱いていたようです。作品として形にするべくクラウドファウンディングサイト kickstarterでCD制作のための一部資金を募り、目標の二倍の金額を達成。今年の3月にすべての作業を終え、「90年代日本アニメサントラへのラブレター」となる本作『Beyond Libra』のリリースと相成りました。アルバムは五つの言語でそれぞれ歌われたヴォーカルトラックを中心とした全13曲。楽曲ごとにVOCALOIDをふくむ複数のヴォーカリストやコーラス隊、バンドアンサンブル、室内楽アンサンブルを投入し、ウィルバート氏の持ち前のオーケストレーションはもちろんのこと、ワールドミュージックやニューエイジ・ミュージックのエッセンスをふんだんに盛り込んだポップミュージックに仕上がっており、アディエマスやパット・メセニーもかくやといった雄大で多様なスケールを感じさせます。長年の想いと持てるインスピレーションのすべてを吐き出しているといっても過言ではないほどに、どこを切ってもとてつもない熱量がこぼれだすかのよう。全曲、全力でオススメしたい作品です。



「Lara Croft composer unveils new anime-inspired original album」
(from VGMonline|2015.11.10)

「Will Roget Interview: From Transcribing MIDIs to Scoring AAA Titles」
(from VGMonline|2014.09.14)


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