2016年2月4日木曜日

4プロデューサー×5ヴォーカリスト×7アレンジャーの饗宴 ― Q-MHz(畑亜貴、田代智一、黒須克彦、田淵智也)『Q-MHz』(2016)

Q-MHz
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 畑亜貴田代智一黒須克彦田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)、異なるキャリアを積んできた四名からなるプロデュースチーム Q-MHz【キュー・メガヘルツ】のデビューアルバム。2013年に放送されたアニメ「夜桜四重奏 ~ハナノウタ~」のキャラソン&サントラアルバム『桜新町の鳴らし方。』に収録された"かしましかしまっ!"で四名が共作を行った(作詞:田淵&畑/作曲:田淵&田代/編曲:黒須)ことがキッカケとなり結成。アルバムは各曲にセクションリーダーを立てつつ、全員がそれぞれ意見とデータの交換を密にしながら制作が進められ、メンバーがこれまでに楽曲を提供した鈴木このみ東山奈央南條愛乃LiSAの四名に、話し合いのもと白羽の矢が立てられた小松未可子を加え、計五名のヴォーカルをフィーチャーした楽曲を各二曲ずつ収録。「リスナーがそれぞれのヴォーカリストに期待する曲」と「プロデュースメンバーのカラーを反映した曲」という意図で一曲ずつ用意しているあたりも、実に抜かりがありません。また、滝善充、清水哲平、新井弘毅、齋藤真也、CHRYSANTHEMUM BRIDGE、牛尾憲輔、中西亮輔といった共同アレンジャーの顔ぶれも見逃せないところ。ライナーノーツには制作プロセスや各曲の詳細なコメンタリーが掲載されており、この豪華なプロジェクトについての知りたい情報がしっかりと網羅されているのも嬉しい。四人のコンポーザー、五人のヴォーカリスト、七組のアレンジャーがいずれも良好なパフォーマンスを発揮し、ゴージャスな化学反応を生み出したアルバムが本作なのであります。

 オープニングの"LiVE DiVE MHz !!"は、LiSAさんをフィーチャーし、共同編曲/ギターに滝善充氏(9mm Parabellum Bullet)を迎えた一曲。キレッキレのバンドサウンドとハイテンションなヴォーカルによるド直球のキラーチューン。畑さんの詞の言葉選びとフレーズとしての詰め方もめちゃくちゃ気持ちがよく、よりいっそうドライヴ感で「突き抜ける」仕上がりになっています。ベースは黒須氏、ドラムスは城戸紘志氏(ex.JUDE~フジファブリック、現.unkie)。もう一曲の"JURASSIC KiSS"は、SEKAI NO OWARIの共同編曲者としても知られるプロデューサーチーム CHRYSANTHEMUM BRIDGEを迎えたシュビドゥバなポップ・ジャズ・チューン。打って変わって艶っぽさに富んだ内容になっています。また、サックスソロは武田真治氏によるプレイ。




 小松未可子さんをフィーチャーし、元THYMEの清水哲平氏が編曲に加わった"ふれてよ"は、王道のスケール感にあふれたシンフォニック・バラード。対する"short hair EGOIST"は、ギターに三澤勝洸氏(パスピエ)を迎えたスカ調のロックチューン。城戸氏、田淵氏、黒須氏とのバンドスタイルで、小回りの効いたトリッキーなサウンドをこなしています。前述の"LiVE DiVE MHz !!"もそうでしたが、本作ではメンツ的にちょっとしたスーパーバンドになっている曲がチラホラあるので、人材フェチにはたまらないものがあります、ハイ。

 鈴木このみさんをフィーチャーした"星の名は絶望"は、メタリックなリフとドコドコした疾走感といい、クワイアコーラス風の挿入といい、頻出する「滅び」「荒野」のワードといい、完全にメタル。そもそも彼女の2012年のデビューシングル"CHOIR JAIL"からしてメタルでしたし(畑&田代コンビによる一曲でもありました)、キバオブアキバとのコラボや、Dragon Guardianのアルバムへのゲスト参加など、なにかとメタルやハードエッジな曲に縁のある彼女にピッタリなオーダー。ドラムスは城戸氏、ベースは田淵氏。そして、ギターと編曲を担当されたのは新井弘毅氏(ex.serial TV drama)なので、エッジの効いたサウンドはお手のものといったところ。対する"「ごめんね」のシンデレラ"は、幅広いフィールドと多岐に渡るジャンルで活動を展開している中西亮輔氏を編曲者に迎えた、バンドスタイルによるポップチューン。ギターは遠山哲朗氏、リズム隊は黒須氏と城戸氏。オーソドックスな曲ほどプロデュースの手腕が問われるわけですが、見事なトータルサウンドに仕上がっています。




 東山奈央さんは本作のヴォーカリストのなかで唯一、ソロでの活動を行っていない(キャラソンでの歌唱はありますが)ということで、他とは異なるスタンスがとられております。中川翔子、水樹奈々、玉置成美などの編曲も手がける齋藤真也氏を迎えての"手探りで今のなかを"は、ストレートに彼女を表現した一曲。ギターは齋藤氏と組むことが多い海老澤祐也氏。ストリングスアレンジは室屋“大先生”光一郎氏。そして"I, my, me, our Mulberry"は、一人二役のヴォーカル/コーラスという、彼女の声優の技能がフルに発揮された一曲。アップテンポで楽しく、さらに「両耳が幸せ」という、法悦の一曲。田代、黒須、田淵の三名による「リレー共作」というところもポイントでしょう。

 南條愛乃さんをフィーチャーした"La fiesta? fiesta!"は、畑さんが作曲を、齋藤氏が編曲を手がけ、バグパイプの音色やヒネりの効いたコーラスアレンジが効いた一曲。しかし、制作にあたっては「職業作曲家としての自信が一気になくなった」ほどの相当な難産だったようです。最終的に「チームに頼ればいい」ということに気づいたことで、なんとか吹っ切れたとのこと。そういったエピソードからみると、チームワークがキーワードである本作を象徴する曲なのではないかと思います。てらいなく明快なラヴソング"愛シカタナンテ知ラナイ"も、チームワークへの全幅の信頼がキーとなった一曲。共同編曲者は牛尾憲輔氏(agraph)。また、近年の森重樹一氏(ZIGGY)の右腕であり、先ごろ単独アーティストデビューも果たした気鋭のギタリスト 山本陽介氏がそれぞれ参加しています。


「畑 亜貴、田代智一、黒須克彦、田淵智也の4人による最強タッグが誕生!Q-MHzの1stアルバムに迫るロングインタビュー!」
(from リスアニ!WEB|2016.01.27)

http://www.toysfactory.co.jp/artist/QMHz