2016年1月30日土曜日

理性的な激情の増幅。アヴァン・プログレ・メタル・シーンの恐るべき伏兵 ― Dissona『Paleopneumatic』(2016)



 前身バンド「The Vision」が発展的解消を遂げる形で、シカゴで2005年に結成されたプログレッシヴ・メタル・バンド Dissona。2009年に『Ten Masks』で自主レーベルからアルバムデビュー。同作はドラマー不在での録音でしたが、その後、ニューレノックスのプログレッシヴ・デスメタル・バンドであるCIMMERIANのツアーサポートを務めていたドリュー・ゴダードを正式ドラマーに迎え、現在のラインナップが固まります。2012年にバンド名を冠した2ndアルバム『Dissona』をリリース(現在、バンドの公式bandcampアカウントで投げ銭でダウンロード可能です)。フュージョン、プログレ、メタル、エレクトロニカ、エスニックなどのエッセンスに、ソプラノヴォーカル/クワイアコーラスの大仰なアレンジメントが合わさり、スキあらば手数とフックを盛り込む演奏と朗々たるヴォーカルが激情をガンガンに増幅させてゆくアヴァンギャルド・メタル。アルバムを聴きとおしていて同じバンドのサウンドなのかと思うほどに雑多な要素と展開が次から次へと投入されています。





 しかし、一見キメラじみているようでゲテモノにはならず、あくまで理性的であるのがポイント。海外のとあるレビューでは“デヴィン・タウンゼンド meets Arcturus”という形容がされておりましたが、なるほどうなづけるものがあります。本作『Paleopneumatic』は約四年ぶりとなる3rdアルバム。今回も自主リリースです。曲数を絞り、より長尺志向に舵を切ったなという印象で、ヒネリまくった構成でなおかつエモーショナルな見せ場も設ける会心の大曲"Another Sky"でいきなり度肝を抜いてきます。爆発力では"The Last Resistance"にも注目です。それでも、前作と比べると今回はやや間延び気味。長尺志向でスケール感を広げるねらいが成功しているとは言い難いのが惜しいところですが、楽曲ごとに明確な差異化が図れれば、まだまだ化けるでしょう。ソプラノとストリングスの響きが絡み合うラストナンバー"Sunderance"の混じりけのない美しさに、次なる展開への希望も募ります。これだけ実力・センスがズバ抜け、持ち合わせる手札も潤沢とあらば、メジャーレーベルがいつ獲得に乗り出してもおかしくありませんし、間違いなく凡百のメジャーバンドを脅かす存在に躍り出るでしょう。


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