2015年12月22日火曜日

ハートフルな歌心が包む、アルゼンチンのピアニスト率いる新鋭プログレバンド ― Escalera『Días sin años』(2015)




 2013年に中心に結成された、アルゼンチン・ブエノスアイレスの四人組プログレッシヴ・ロック・バンド Escaleraのデビューアルバム。ふと耳にしたバンドなのですが、これがすごく琴線に触れるサウンドなのです。バンドのフロントマンであるヴォーカル/ピアニストのマルティニアーノ・タノーニは音楽院で作曲を学び、これまでに二枚のソロアルバムをリリースしているほか、MartiNayandoというアコースティック・フォーク・デュオでも活動中。室内楽の作曲のほか、同国の作家フリオ・コルタサルにオマージュを捧げたショートフィルムへ楽曲を提供するなど、多岐に渡る活動を展開している気鋭のコンポーザーにしてプレイヤーでもあります。

 チャーリー・ガルシアやルイス・アルベルト・スピネッタ、アタウアルパ・ユパンキといった本国のカリスマや、ブラームス、ドビュッシー、ビル・エヴァンス、そしていわゆるプログレ五大バンドなどから影響を受けたという彼の紡ぎ出すサウンドは、ハートフルな歌心に満ちたAORプログレといえるもの。ストリングスを交えての柔らかなバンドアンサンブルとヴォーカルで包みこむような"Aunque el mundo gire" "No dejo de escucharte"や、アコースティカルな小品"Medianoche" "Mañana"でじっくりと聴かせる一方、"Grito""Lamento" "Ansiedad"ではピアノを交えてのダイナミックなハード・ポップを、"Ultima hora"では演歌調の泣きをたっぷりとを展開。ソフトからハードまで対応したバンドのスタイルもまた、たまらないものがあります。メンバー全員がコーラスをとるバンドであるのも強みです。ソロのピアノとアカペラのみで鮮やかなイメージを描き出す"Días que vendrán"は、本作でも印象深い一曲。人懐っこく寄り添うようなたたずまいには、アルゼンチンの名プログレバンド Pablo El Enterradorをそこはかとなく思い出したりもしました。

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