2015年7月13日月曜日

〈ペリー・ローダン〉スペース・ロック・コンピレーション ― 『The Psychedelic Avengers Vol.2』(2006)

テラナー (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-500 宇宙英雄ローダン・シリーズ 500)
H・G・フランシス ウィリアム・フォルツ
早川書房
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 世界最長のスペースオペラシリーズ〈宇宙英雄ペリー・ローダン〉の邦訳が先ごろ500巻(1000話)を迎えたそうで、とくにシリーズを追っかけているファンではないのですが、それでも感慨深いものを感じました。しかし本国では2800話を越え、外伝シリーズも含めてなお現在もハイペースで刊行中というのですから、気が遠くなります。そもそも第1000話がドイツ本国で発表されたのは1980年なので、まだ35年もの差があるのですよね。


サイケデリック・アヴェンジャーズ 第二集(THE PSYCHEDELIC AVENGERS AND THE THE DECTERIAN BLOOD EMPIRE)
オムニバス
インディペンデントレーベル (2006-10-20)
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 かつて日本では'78年(邦訳が40巻くらい出たころ)に寺内タケシとブルージーンズによるイメージアルバムが出ておりましたが、こちらはドイツ本国で2000年代半ばにリリースされた企画アルバム。正式タイトルは『The Psychedelic Avengers And The Decterian Blood Empire - Vol 2』。〈サイケデリック・アヴェンジャーズ〉と銘打ったサイドストーリーであり、一大ミュージック・プロジェクトでもあります。2004年に第一弾CDが出ているのですが、この第二弾CDはさらなるパワーアップを遂げ、CD二枚組にわたって目一杯楽曲が収録され、コンセプト面ではローダン執筆者のひとり、レオ・ルーカスによる書き下ろしストーリー「悠久の虚飾の水晶」(金子みちる訳)が付されています。といっても、デクテリアン帝国に決死の戦いを挑む数多のサイケデリック・アヴェンジャーたちの話なので、ローダンや主要なキャラクターたちは出てきません。レオ氏は、2001年に刊行された第2059話から現在まで断続的に執筆に参加(数十話ほど)している、執筆陣のなかでは若手。作家というよりは芸人/ミュージシャン気質の人のようで、単独の活動でローダンものの音楽作品を制作してもいるようです。





 パッケージの文面には、「これはコンピレーションでも、オーディオブックでもない。これはアナタ自身の想像上のSF映画のためのサウンドトラックであり、意識を拡大させるサイケデリック・スペース・オペラなのである」という但し書きがついております。一アーティスト一曲形式なのかというと必ずしもそうではなく、何人ものアーティストが複数トラックにわたってクレジットされた楽曲が多いです。つまり各アーティストがレコーディングしたマテリアルを切ったり貼ったりして楽曲にしているといったほうがいいでしょうか。音楽性もサイケデリック/スペース・ロックを基調に、テクノ、アンビエント、ヒップホップ、ハードロック、オルタナティヴ・ロック、エクスペリメンタル・ミュージックなどが混じり合っており、全容をつかむのにはなかなか時間を要します。長大なシリーズだけに、こういう入り乱れた趣向は「らしい」かもしれませんね。さすがひとクセもふたクセもあるバンドを多数輩出したジャーマン・ロックの国はやることが違うなと思います。サイケデリック/スペース・ロック系バンドの顔ぶれをみると、ドイツのELECTIC ORANGEVIBRAVOIDZONE SIX、アンダース・ベッカー(Mandra Gora Lightshow Society)、フィンランドのDARK SUN、ベルギーのHYPNOS 69、そして日本からはMARBLE SHEEPが参加しています。そういうこともあってか〈サイケデリック・アヴェンジャーズ〉の二枚のアルバムは日本盤がキャプテン・トリップ・レコードから出ています。まだ廃盤にはなっていないようなので、入手は容易かと、


サイケデリック・アヴェンジャーズ 第一集(THE PSYCHEDELIC AVENGERS AND THE CURSE OF THE UNIVERSE)
オムニバス
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The Psychedelic Avengers
『The Psychedelic Avengers And The Decterian Blood Empire - Vol 2』- discogs


 〈ペリー・ローダン〉を題材とした音楽作品はローダン専門wikiのperrypediaにまとまっておりますが、こちらも膨大な数にのぼります。いくつか気になったものを以下に。


Marcello Giombini『4.3.2.1 Morte (Perry Rhodan) Soundtrack』(1967)
...4..3..2..1...Morte
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Gdm (2001-10-22)
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https://itunes.apple.com/jp/album/4.3.2.1-morte-perry-rhodan/id490111791

 '67年にイタリア/西ドイツ/スペインで共同製作されたローダンの実写映画版「Perry Rhodan – SOS aus dem Weltall(独題)」のサウンドトラック。映画はシリーズ第一巻『スターダスト計画』が原作で、いちおう『...4...3...2...1... デス、ミッション・スターダスト』という題で日本でもかつてソフト化されていました・・・・・・本編の出来はお察しのようですが。ライブラリーミュージックやマカロニ映画のサウンドトラックを手がけたMarcello Giombini(マルチェロ・ジョンビーニ)がスコアを手がけているので、その筋の人にはたまらないのではないかと。いまではiTunesでサウンドトラックの全曲が買えます。




SENSUS『Perry Rhodan ... More Than A Million Lightyears From Home ...』(1986)

  '84年にデビューしたドイツのテクノ・グループ SENSUSが'86年にリリースした最後のシングル。ジャケットは、〈ペリー・ローダン〉第1000話『テラナー』の本国版の表紙絵の流用。このシングルは同年に開催されたローダン25周年のワールドコンで売られたそうな。ちなみに曲はスペースズンドコ節とでもいうようなシンセ・ポップ。マジでズンドコ節です。わずか三枚のシングルリリースで消滅してしまったのですが、とにかくヴィジュアルが完全に宇宙人のソレで、ハンパなく強烈です。ダフトパンクより前にこんなことをやっていたのかといったところですが、出てくるのが早すぎた感があります。





Christopher Franke『Perry Rhodan Pax Terra』(1996)

元TANGERINE DREAMのクリストファー・フランケが'96年12月に発表したイメージアルバム。このころ彼は「バビロン5」のスコアも手がけていたので、方向性がかぶっているなという感は否めませんが、よい内容です。ちなみに本作は、同年にフランケが手がけた劇場版アニメ「天地無用! in LOVE」のサウンドトラックと制作環境が同じ。つまり、ベルリンシンフォニックオーケストラとリック・ジュードがこちらにも参加しているのです。リリースは天地無用のほうが先(4月)なので、こちらのレコーディングの際にまとめて録っていたのかもしれません。
 https://itunes.apple.com/jp/album/perry-rhodan-pax-terra/id257810982





Spyce『X-Plorer - A Trip through the Universe of Perry Rhodan』(2007)
X-Plorer - A Trip Through The Universe Of Perry Rhodan
Perry Rhodan Spyce
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 '07年にリリースされたイメージアルバム。メインコンポーザーのAlf M.は、ジャーマン・プログレ・バンド Rachel's Birthdayの元キーボーディスト アルフレッド・ミュラー。実質的に彼のソロアルバムです。エレクトロ・ポップ/スペース・ロック路線でまとめられています。こちらもアルバムジャケットは本国版『テラナー』の表紙絵の流用。