2015年2月11日水曜日

猟奇・幻想・怪奇プログレッシヴ・ロック・バンドによる、十年ぶりの完全犯罪 ― 金屬惠比須『ハリガネムシ』(2015)

ハリガネムシハリガネムシ
(2015/02/11)
金属恵比須

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東京を拠点に活動する猟奇骨董プログレッシヴ・ロック・バンド 金屬惠比須(きんぞくえびす)の、通産三作目、実に10年ぶりとなる新作アルバム。バンドの歴史は古くて長く、結成は'96年にさかのぼります。'03年に1stアルバム『箱男』を、貳代目金屬惠比須名義で'04年に『紅葉狩』をPOSEIDON傘下のVital Recordsよりそれぞれリリース、'06年にはメキシコで開催されたプログレッシヴ・ロック・フェス「Baja Prog」への参加も果たしております。一方、フロントマンである高木大地氏は内核の波Shinsekaiといったプログレッシヴ・ロック・バンドへの参加も精力的に行っており、特に内核の波では演奏のみならず「食」担当として、ライヴにおいて弁当を食べるパフォーマンスもろとも好評を博しておりました。金屬惠比須の音楽性の核となるのは、GENESISやKING CRIMSON、BLACK SABBAHやDEEP PURPLEなどのブリティッシュ・ハード・ロック/プログレ、そして、江戸川乱歩や、横溝正史、安部公房、京極夏彦などの怪奇幻想小説。そして何より、人間椅子からの影響です。特に『箱男』のころは色濃く反映されておりました。メロトロンやハモンドオルガンのヴィンテージ・キーボードを多用しての和洋折衷な情緒を孕んだ大作から、「君のおうちのお風呂のお湯になりたい」と歌う"猟奇爛漫"(『紅葉狩』収録)のようなナンセンスソングまで、その音楽性と実力のほどは既に確立されておりました。2013年ごろより、高木氏も参加している“DEEP PURPLE精神完全コピーバンド”「大徳」のメンバーのほとんどがそのまま合流する形で現在の編成となり、今回の『ハリガネムシ』にも繋がります。スタジオ版以上のパフォーマンスを繰り広げるライヴ・バンドとしても定評があり、近年のライヴでは元GERARD、元人間椅子のドラマーである後藤マスヒロ氏が“限定加入”されたりもしています。



収録曲は全七曲。フリッパートロニクスとメモトロンによる短いイントロダクション"蟷螂の黄昏"を経てのタイトルトラック"ハリガネムシ"は、脳に寄生するハリガネムシを用いた完全犯罪を歌う、これぞ金屬惠比須といった猟奇的方向性の一曲。紅一点メンバーの稲益宏美さんのぶっきらぼうでどこか憂いのあるヴォーカルも印象的なハード・ロック チューンに仕上がっており、「もしも最終的にはDEEP PURPLEがアヴリル・ラヴィーンのバックをやったら?」というコンセプトも言い得て妙です。あと、ヒジキが喰えなくなります…ねえ? "光の雪"はヴィンテージ・キーボード/シンセサイザーがフル活用され、リック・ウェイクマンを思わせるキーボードソロも組み込まれたシンフォニック・ロックで、「クリスマスの日にあまねく人々がアセンション(次元上昇)を遂げるなか、少年は現世に残り世界を手に入れる」という、感動的なコンセプトの大曲であります(ふと、グレッグ・ベアのSF短編「タンジェント」を思い出しました…パターンは逆ですが)。救済のごときキーボードとギターの泣きのメロディの洪水が聴きものですね。個人的にイチオシの一曲です。エミリー・ブロンテの名作をイメージした牧歌的な小曲"嵐が丘のむこうに"を経て、"紅葉狩(第三部・第四部)"は、同名の2ndアルバムに収録されていた20分近い叙情組曲の後半パートの再録。メロトロン&メモトロンの怒涛の洪水から幕開けし、新●月にも通じる和情緒も感じさせながら、ベースがドライヴ感を増してゆき、KING CRIMSON"太陽と戦慄"オマージュなヘヴィ・プログレへと雪崩れ込むという構成。"イタコ"は、コンセプト、サウンドともに正しく人間椅子直系、"ダイナマイト"や"エキサイト"のような、ユーモラスでライヴ映えしそうな勢いの疾走チューンです。ラストを飾る"川"は、ライヴでも共演しているシンガーソングライター/映画音楽家の入江陽氏の楽曲(彼の'13年のアルバム『水』に収録)を、金屬惠比須ヴァージョンとして収録したもの。ゲストで入江氏自らもヴォーカルとして参加しており、叙情性マシマシのアレンジでもうひとつの"川"を提示しております。井上陽水と初期KING CRIMSONのミッシングリンクというか親和性の高さみたいな印象も感じさせるのがまた面白い。アルバムを通して三十数分ほどの収録時間ですが、個々の楽曲それぞれに濃密な情念と怨念がみつしり詰まった、申し分のない存在感のあるアルバムです。




高木氏による『ハリガネムシ』楽曲解説ツイートも必見です。













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