2014年8月3日日曜日

PENDRAGONのクライヴ・ノーランがプロデュースする、ポーランドの女性シンガーのソロアルバム ― Agnieszka Swita『Sleepless』(2014)

SleeplessSleepless
(2014/07/08)
Agnieszka Swita

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ポーランドの女性ヴォーカリスト Agnieszka Switaの1stソロアルバム。彼女は数年前より、PENDRAGONやARENA、SHADOWLANDといった多数のプログレッシヴ・ロック・バンドを股にかけるClive Nolanと組んだシンフォニック・ロック・ユニット CAAMORAでも活動しておりますが、ここにきてソロ名義での作品をリリースしました。NolanとAgnieszkaとの出会いは2005年頃まで遡り、CAAMORA名義としてはこれまでに3枚のEPと、冒険小説作家ヘンリー・ライダー・ハガードの「洞窟の女王」をモチーフとしたロック・オペラ・アルバム『She』、そして同アルバムの楽曲を演奏したライヴDVDと、アコースティック・ライヴアルバムを発表しております。また近時では、Nolanのプロデュースによるプログレッシヴ・ロック・ミュージカル「Alchemy」のキャストにも名を連ねており、精力的な活動を展開しています。

SheShe
(2008/02/28)
Caamora

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ソロアルバム、とは言っても本作のプロデュースはNolanであるので、実質的にCAAMORAの延長線上です。作風もいくらかゴシック・メタル寄りかなというくらいで、基本的にはバンドスタイルで展開するスケールの大きなシンフォニック・ロック・サウンドであります。CAAMORAでも遺憾なく発揮されておりましたが、Agnieszkaのヴォーカルの表現力はやはり卓越したものがあり、伸びやかさや力強さもさることながら、妖艶な側面の演出に長けています。ヴォーカル/コーラスを前面に押し出し、エッジの効いたバンドサウンドで仕上げられた「Cosmo」三部作をハイライトに掲げ、パワーバラード・スタイルの"Borderland" "In Her Arms"、エモーショナルなサビを設けたリードトラック的な"Trapped"、最後はプログレッシヴ・ロック・オペラな趣向をダイナミックに繰り広げる"Sleepless"といった、コンパクトな全10曲。安定感のある演奏とプロダクションで生み出された、秀逸な歌もの作品として首尾一貫した内容になっています。



アルバムのミキシング/マスタリングは、PENDRAGONのバンドメイトであるKarl Groom。バックバンドは、キーボードとオーケストレーションを担当するNolanを筆頭に、元IQのPaul MenelのバンドでもプレイしているギタリストのSteve Harris(もちろんIRON MAIDENの同名メンバーとは別人)、Twelfth NightJUMPなどへの参加歴もあるベーシスト Andy Faulkner、そして何より驚いたのが、先ごろDRAGONFORCEを脱退したDave Mackintoshがドラムスとして参加しているところです。彼がDRAGONFORCEを脱退したのは、プログレッシヴ・ロックがやりたくなったからというのもあるのだそうですが、なるほどこういう繋がりでやっていくのかと。実はDRAGONFORCEはPENDRAGONと浅からぬ関係があります。というのも、初期アルバムのミックス/エンジニア周りやプロデュースはKarlが担当していた上、Nolanは演奏やバッキングヴォーカルでアルバムにずっと参加しているからです。彼らのスタジオアルバムのクオリティの高さは、ひとえに彼らの力によるところも少なからずあったのではないかなと思います。

Agnieszka Swita - Official Site
Agnieszka Swita - YouTube
CAAMORA - ProgArchives
デイヴ・マッキントッシュ - Wikipedia