2014年6月27日金曜日

ドイツが誇る五色のスーパーヒーローメタルバンド、起死回生の(?)1枚 ― Grailknights『Calling the Choir』(2014)

Calling the ChoirCalling the Choir
(2014/04/11)
Grailknights

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https://itunes.apple.com/jp/album/calling-the-choir/id840857573

  Grailknightsが今年に入って6年ぶりのニューアルバムを出していたと少し前に知り、iTunesでポチりました(Amazon MP3だともうちょっと安い)。「Grailknightsとは何ぞや?」と、知らない人に説明いたしますと、ドイツの誇るスーパーヒーローバンドです。Sir Optimus Prime(vo.g)、Lord Lightbringer(g.vo)、Duke of Drumington(ds)、Mac Death(b.vo)の4人で2002年に結成。当初は「Galactic Grailknights」という長めのバンド名でした。ちなみにDuke of DrumingtonMac DeathA COLOUR COLD BLACKというスラッシュ・メタル・バンドのメンバーとしても活動されていたようです(1995年結成/2005年解散)。

  Grailknightsは2004年に初のフルアルバム『Across the Galaxy』、2006年に2ndフルアルバム『Return to Castle Grailskull』を発表。後者に収録された楽曲"Moonlit Masquerade"のPVがどこを切ってもツッコミどころ満載な内容だったため、【珍メタル】の一つとして日本の一部のメタラーの間でも話題となります。ヴォーカルのグロウルや、楽曲のアコースティカルな展開も多いため、音楽性はメロディック・デスメタルともフォーク・メタルとも言われたりしますが、基本的には正統派のヘヴィ・メタルです。見た目はともあれ音楽的には非常にまっとうなものなので、ネタとして見ているうちにその音楽性の虜になり、[Battlechoir] (Grailknightsのファンの総称)の一員となってしまった人も数知れず。アルバムはもちろん、ライヴでも正義と悪の戦いというコンセプトを前面に押し出したパフォーマンスを繰り広げる首尾一貫した姿勢を貫いているので、そういうところにもまた惹かれるものがあります。





  2008年に3rdフルアルバム『Alliance』を発表後、Duke of Drumingtonが脱退、後任にBaron van der Blastを迎えます。彼は本名をMatthias Liebetruthというのですが、ヘヴィメタル界では著名なプロデューサーの一人であるトミー・ニュートンが在籍していたことで知られるジャーマン・メタル・バンド VICTORYの元メンバーであり、Grailknightsに加入する前にはSCORPIONSやRUNNING WILDのサポートメンバーでもあったというヴェテランです。バンドは2010年には初のライヴDVD『Live at the Gates of Grailham City』を発表。このまま順調な活動を続けるかと思いきや、2011年に入って今度はLord Lightbringerが脱退。残ったメンバー3人で4月に3曲入りのEP『Non Omnis Moriar』を発表するものの、7月にはとうとうMac Deathまでもが脱退してしまいます。オリジナルメンバーはもうSir Optimus Primeただ一人、すわピンチか? …と思いきや、後任メンバーは意外とすぐに見つかったようで、同年にCount Cranium(b)、Sovereign Storm(g)、Earl Quake(g)の3人が加入。2013年にはBaron van der Blastに代わってLord Drumculesを迎え、ここに新生Grailknightsのラインナップが固まります。

                         




  そして満を持して発表されたのが、今回ご紹介する『Calling the Choir』。メンバーが殆ど入れ替わってしまったのだから、音楽性も劇的に変化してしまうだろうと思っていたのですが……なんと、何も変わっていませんでした。イモ臭い疾走感、吐き捨て気味のヴォーカル、ムサ苦しいコーラスワークと掛け合い、垢抜けない泣きを聴かせるギター、やたら秀逸なバラードナンバー…良い意味でのB級ヘヴィメタルのアレコレが詰まっておりました。それだけSir Optimus Prime氏が楽曲面で大きなイニシアチブを握っていたということなんでしょうが、それでもここまでブレがないというのは一目に値するのではないかと。もっさりしたフォークメタルチューン"Calling the Choir"でいきなり始まった時の微笑ましさといったら。疾走チューンと思わせて、結局ミドルテンポでタメの効いた展開になってしまう、このボンクラ感がたまりません。ロシア民謡めいた曲調で奔放なコーラスが目立つ"Morning Dew" "Sea Song"や、ある意味本領を発揮した(?)アコースティック・バラード"Anna Lee"、往年のジャーマン・メタル的な様式美を感じさせる"End of the World"と、曲調のヴァリエーションは決して広いものではないのですが、数曲聴くうちに細かいことはどうでもよくなります。




  アルバムの最後を飾るのは、日本では麻倉未稀の歌唱でTVドラマ「スクール☆ウォーズ」の主題歌にもなったことでもお馴染み、ボニー・タイラーの"Holding Out For A Hero"のカヴァーです。実は3年前にリリースされたEPで既にカヴァーされているのですが、このバンドらしい選曲だと思います。カヴァーといえば、こちらもご紹介しておきましょう。Grailknightsによる、スーパーヒーローもののテーマのカヴァーメドレー。ちなみに「Saber Rider」は「星銃士ビスマルク」の海外タイトルです。ユーモアを散りばめつつ、愛のあるアレンジも忘れない、非常にナイスなカヴァーなので、必見であります。





  現在もヨーロッパツアーで各地を精力的に回っており、ビッグネームも名を連ねるメタル系フェスにも度々参加しているGrailknights。いろいろありましたが、今、再び充実の時を迎えているのではないでしょうか 。

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Grailknights - Youtube
Grailknights - Encyclopedia Metallum
Grailknightsとは - ニコニコ大百科
Grailknights - Wikipedia