2014年6月19日木曜日

能天気だけど実力派、スペイン生まれのミクスチャー・プログレ ― Cheeto's Magazine『Boiling Fowls』(2014)


スペインはバルセロナのプログレッシヴ・ロック・バンド Cheeto's Magazineのデビューアルバム。bandcampにてname your priceでダウンロード可能な作品です。バンド自体の活動歴はまだ浅く、結成は恐らく'00年代後半頃(公式facebookアカウントを開設したのは2009年)と思われます。また、影響を受けたバンド/アーティストにQUEEN、SPOCK'S BEARD、TRANSATLANTIC (Neal Morse)、DREAM THEATER (Jordan Rudess)、IT BITES、KINO、FROST*の名前を挙げています。スペインのプログレ勢にはクセのあるバンドが多いイメージだったのですが、このバンドはネオ・プログレッシヴ・ロック以降の英米バンドから強く影響を受けているためか抜けが良く、また、暖色系の音をふんだんに聴かせてくれるので人懐っこさも十分です。ポップでキュートなジャケットのイメージに違わず、能天気かつマイペースなスタイルを遠慮なく貫いているのが、このバンドの大きな魅力でしょう。

1曲目でいきなり25分を超える大曲"Nova America"を持ってくるという暴挙もなんのその、手を変え品を変え、さらには随所にユーモアを織り交ぜつつ、最後まで聴かせるテクニックとパワーをこの曲で見事に実証してくれます。バンドメンバー5人全員+2人のゲストヴォーカルを迎えて作り上げられたコーラスワークがもたらす奇妙な美しさ(?)は聴きもので、時にヒネくれの度合いが強まってGENTLE GIANTを彷彿とさせるのがまた微笑ましいのです。この曲以降はコンパクトな楽曲をバラエティ豊かに展開。EDM要素も加味したダンサブルなエレクトロ・チューン("The Driver And The Cat")を聴かせたかと思えば、シンセサイザーを基調にした躍動感溢れるインストゥルメンタル("Volcano Burger")を聴かせ、コーラスハーモニーの絡みを活かしたQUEENばりのポップ・ロック("Teddy Bears")を聴かせたかと思えば、悪ノリ気味のロックンロール("Four Guitars")を聴かせる…という具合。時にニューウェイヴ・パンクにも接近するのですが、それでもプログレ的なツボは外さないのがミソ。終盤の"Octopus Soup" "Fat Frosties"は、そんな彼らのミクスチャー感覚とユーモアが最大限に発揮された絶品の楽曲です。最後はエフェクトをかけたヴォーカルをフィーチャーした、DAFT PUNKばりのエレクトロ・ロック・チューン"Driver French"で、好き放題やらかしたアルバムをキャッチーに締めくくります。それにしても振れ幅の広いことだなあと思います。この節操のなさと能天気さは失わないで欲しいですね。

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