2013年6月28日金曜日

PABLO EL ENTERRADOR 『2 (Re-Issue)』(1998/2013)

セカンドセカンド
(2013/06/25)
パブロ・エル・エンテラドール

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 イギリスやアメリカのプログレッシヴ・ロック・シーンは70年代中盤以降はある程度沈静化してしまうものの、東欧や南米では70年代後半から80年代にかけて華開いたバンドが数多く存在します。長き雌伏の時を経てアルバム・デビューを果たしたアルゼンチンのプログレッシヴ・ロック・バンド PABLO EL ENTERRADOR(墓堀りパブロ)もそんなバンドの一つ。1stアルバムのジャケットは、一見すると牧歌的な雰囲気のジャケットながら、農夫が官憲や権力者を生き埋めにしているという穏やかならぬ風刺の効いたもので、彼らの苦節の活動の一端が偲ばれるものにもなっています。というのも、アルゼンチンは70年代半ばから80年代初頭にかけて軍事独裁政権下にあり、数多くの市民が弾圧されるという情勢でありました。そんな中での音楽活動は容易なものではなかったでしょうが、彼らは地道に政府に対してアゲインストしていたのです。


パブロ・エル・エンテラドール
パブロ・エル・エンテラドール
マーキー・インコーポレイティド (2011-11-25)
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 軍事独裁政権が終焉を迎えた1983年に発表された1stアルバム『Pablo El Enterrador』は、70年代後半の英国プログレからの影響が色濃いコンパクトな作風ながら、哀愁を湛えつつも伸びやかなメロディも満載されたシンフォニック・ロックを全編に渡って聴かせる内容で、後にアルバムが各国へと伝わった際には「アルゼンチン・プログレッシヴ・ロック屈指のアルバム」とも評された名盤でありました。アルバム発表後しばらくしてバンドが活動を沈黙してしまい、幻に近い存在となってしまったことも、高い評価に拍車をかけていたのではないかと思います。その後10年以上の長きに渡りバンドの活動には動きがなかったのですが、1995年ごろよりメンバーが再び集まり2ndアルバムに向けた楽曲制作を開始、数年の期間を経て完成したのが、今回ご紹介する『2』です。先ごろ、アルゼンチンのレーベルViajero Immovilよりボーナス・トラックを追加収録してリイシューされました。

 本作ではキーボード/ピアノを主軸にしたサウンドの元、暖かみのある歌もの楽曲が全編に渡り展開されております。プログレ・ハード/AORのテイストが強まったこともあり、前作で見せたバンドの一体感や、インスト面でのスリリングな疾走感、ダイナミズムなどを求める向きには物足りなさを感じてしまう部分もありますが、ドラマティックで親しみやすいメロディなど、バンドの核となる部分は80年代の頃と全く変わっていません。「Nariguetas」「La ciudad eterna」「Mitad por mitad」など、ぶ厚くも人懐っこいキーボードのメロディに寄り添うかのようにして歌い上げるハートウォーミングなヴォーカルが琴線に触れてくる場面が何度も訪れます。また、前作に収録されていた「Accionista」が、リメイクされて収録されています。前作では抜けの良さと疾走感のあるポップ・ロックでしたが、本作の方はテンポを落としたハードロック寄りのアレンジで、どちらのヴァージョンも甲乙つけ難い仕上がりです。ボーナス・トラックは、1998年3月に本国アルゼンチンで行われたライヴからの音源で、1stアルバムからの4曲(「Carrousell de la vieja idiotez」「Elefante de papel」「Espiritu esfumado」「Accionista」と、なかなかオイシイ選曲)と、Marcelo Saliのドラム・ソロ、合わせて5曲が収録されています。スタジオ版とさしたる違いはないですが、バンドのツイン・キーボードの一角を担っていたJorge Antunが亡くなられている今となっては、貴重な音源でありましょう。バンドは今後再結成する意向があるのかはわかりませんが、メンバーの一人であるJose Maria Blancは現在ソロや自身のバンドで活動を続けているようです。




PABLO EL ENTERRADOR - Prog Archives