2012年12月27日木曜日

シメサバツイスターズ『Progrematica』(2012)


 京都のキーボーディストにしてVOCALOID&UTAU使いのしめさば氏が主宰するサークル シメサバツイスターズの2年ぶりとなる3rdフルアルバム。使用ボカロ(UTAU)は初音ミク、重音テト、雪歌ユフ、波音リツ。前作『ハグルマワールド』はキャッチーでポップ、それでいてヒネりの入ったアレンジの楽曲揃いの良作でありましたが、本作ではDREAM THEATERやSIAM SHADEあたりからの影響も強く感じさせるプログレッシヴ・メタル・サウンドに大接近しており、そっち系のリスナーにもかなりアピールできる仕上がり。さらに今回はトータルアルバムとしてのまとまりが非常に高く、八部構成、トータル30分オーバーという一大組曲"Imperfect Quarters"をアルバムの序盤と終盤に4曲ずつ配し、その間にキャッチーなギター・ロックやポップなナンバーを並べるという超意欲的かつアグレッシヴな構成でラストまで息をつかせぬ流れになっています。

 大曲ばかりに目が行きがちですが、煌びやかなメロディが弾む、可愛らしさに溢れた「シンデレラルール」、重心低めの力強いデジロックチューン「Roaring Twenties」、水を得た魚のごとく躍動するベースと優しく鳴り響くピアノ/オルガンによるバッキングをメインに初音ミクと雪歌ユフがささやくように歌う「日常鎖飯事」、ディストピアSFめいた世界でのボーイミーツガールといった感のヘヴィなギターロックチューン「ハーフムーンラビット」(この曲のみ、ギターソロでダルビッシュPが客演しております)と、いずれもキャラの立った魅力的なものばかりで、アルバムの中間部をカラフルに彩っております。

 さて、大曲"Imperfect Quarters"ですが、まず聴こえてくるブレスとSEによる「Pt.1:幕は上がる…静かに」(タイトルはシド・バレットのアルバム『帽子が笑う…不気味に』へのオマージュ?)、ピアノの旋律に導かれて一転、ギターサウンドが高らかに鳴り響くダイナミックなインスト「Pt.2:Overture1940」、この二段構えのイントロダクションを経て続くHeavyでVeryキャッチーなキラーチューン「Pt.3:ダイナモ」は本作を象徴する1曲。エッジの効いたリフによる押しと、重音テトのヴォーカルの対比もGood。再び展開が一転し、バラード調のピアノソロで始まる第四パート「Pt.4:イルミナ」は、静と動の移り変わり、変拍子の盛り込まれた構成が特に光る1曲。白熱のギター&キーボードソロへと雪崩れ込むあたりのカタルシスも十分です。やや不穏なトーンに満ちた、続くパートへの期待感を高めるブリッジ的なインスト「Pt.5:パントマイムと君主」を経て、乾いたサウンドに雪歌ユフのヴォーカルが控えめに乗る6拍子のギターロック「Pt.6:サイレン」、この曲のラスト1分からはリフの重みとフックが徐々に増していき、「Pt.7:ライブラ」へ。ここからエンディングへ向けて怒涛の展開が続きます。秘めたる感情の昂ぶりのようなバッキングの轟音と波音リツのヴォーカル、その間を縫うピアノの旋律が実にドラマティック。最終パート「Pt.8:Spirituallow」では、これまでの長きに渡る紆余曲折の展開を労うかのような痛快な疾走チューン。「ダイナモ」のフレーズがリプライズし、その高らかな響きと共に堂々たるフィナーレを迎えます。ラストは「ダブルアンコール」で爽やかに、とても爽やかに〆。カーテンコールまで非の打ち所がない構成です。お見事。しめさば氏の自信のほどと手応えを存分に感じさせる快作でありましょう。





シメサバツイスターズ:公式