2010年6月30日水曜日

篠原ともえ『スーパーモデル』(1996)

スーパー・モデル
スーパー・モデル
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篠原ともえ 石野卓球
キューンミュージック (1996-10-02)
売り上げランキング: 75,807


 先日、発売15周年記念でめでたくリイシューされた、篠原ともえの96年のデビューアルバム。プロデューサーの石野卓球をはじめ、ピエール瀧、砂原良徳、CMJK、近田春夫&渡辺貴浩(VIBRASTONE)、濱田マリ(モダンチョキチョキズ)、サーフコースターズ、中原昌也(暴力温泉芸者)、山本アキヲ(HOODRUM)、森若香織(GO-BANG'S)、HOI VOODOOなど、プロデューサー石野氏つながりで多数のゲストが参加。篠原嬢のヴォーカルはキャラの立った良い声をしています。

 シングルカットされた「チャイム」「クルクル・ミラクル」は典型的卓球節と言えるアッパーチューンであり、見事なポップ加減。アルバムの翌年にリリースされたシングル「ウルトラリラックス」(今回のリイシューでアルバムに追加収録されております)と同様、早過ぎた電波曲とも言えるかもしれません。近田春夫・渡辺貴浩がそれぞれ携わったキャッチーなテクノ歌謡「やる気センセーション」「よのさ」、お約束的なサーフサウンドがエネルギッシュな、サーフコースターズ作曲によるロックナンバー「レインボー・ララ・ルー」、スペーシーかつシリアスなエレクトロニカサウンドに、大人びた歌い回しで「キュリー夫人と間違えて、チャタレイ夫人を読んじゃったの」というえらいスッとぼけた内容の詞(作詞は中原昌也氏)、を歌う「チャタレイ夫人にあこがれて」など、どのゲストも各々のカラーを出しつつ、当時の彼女のキャラにピッタリ合わせた曲・詞を提供しているので、アルバムはとにかく明るく弾けたエンターテインメント作品に仕上がっています。ちなみに、リイシュー版に付属しているDVDには3曲のPV+αと、副音声にて石野氏と篠原嬢のコメンタリーが収録されている模様。石野氏がシタールを抱えて篠原嬢の背後で回っている「チャイム」のPVはある意味必見でございます。15年経ってもまだなお鮮度を感じさせるアルバム。


篠原ともえ:Myspace
篠原ともえ:Wikipedia

スーパーモデル(期間限定生産盤)(DVD付)
篠原ともえ
KRE (2010-06-30)
売り上げランキング: 155,226

2010年6月29日火曜日

ANDI DERIS『Come In From The Rain』(1997)

Come in from the Rain
Come in from the Rain
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Andi Deris
Import [Generic] (2001-05-15)
売り上げランキング: 396,062

 元PINK CREAM 69、現HELLOWEENのヴォーカリスト アンディ・デリスの1stソロアルバム。今では中古100円くらいで容易に手に入るシロモノですが、内容はアンディ・デリスのソングライターメロディメイカーとしての実力を存分に発揮した秀作。ピンク・クリーム69在籍時から既に強力な武器であった哀愁のあるメロディを軸にした楽曲は聴き手の琴線を掴むのが実に巧みで、ミドルバラードナンバーでの組み立て方は良い意味でファン泣かせ。日本国内だけで20万枚という大ヒットを記録した、ハロウィンの代表作のひとつとも言え『The Time Of The Oath』の翌年というノリに乗った時期にリリースされた本作は、HELLOWEENへの加入で得た要素を盛り込みつつ、ピンク・クリーム69時代の雰囲気を匂わせる程よいバランスで成り立った作品。

 ハードながらも湿った展開が何気に耳に残る「Think Higher」や、亡きアンディの祖母に捧げた感傷的なバラード「Good-Bye Jenny」、世を儚んで飛び降り自殺を遂げる少年を歌った「1000 Years Away」が連なる序盤は、かのピンククリーム69の名盤『One Size Fits All』を彷彿とさせられる素晴らしい流れ。反面、マイケル・ヴァイカート、マーカス・グロスコフらハロウィンの面々がゲストで参加した「The King Of 7 Eyes」はインパクトのあるヘヴィなスピードチューンながら、正直本作においては蛇足。他の楽曲との毛色が違い過ぎるために浮いてしまっているのがもったいない。それを含め、アルバムを通してみればいくつか捨て曲こそありますが、それでも穏やかに琴線に触れるウェットな魅力ある楽曲が多いのは嬉しい。切々と歌い上げるアコースティックナンバー「Now That I Know This Ain't Love」はシンプルながら秀逸だし、日本盤ボーナストラックの「In The Lights Of The Sky」も、ボーナスにするには惜しいくらいの隠れた良曲。梅雨、あるいは秋に聴くと染みる一枚。



ANDI DERIS:Wikipedia
HELLOWEEN:Wikipedia

2010年6月28日月曜日

Animals As Leaders『Animals As Leaders』(2009)

Animals As Leaders


 カオティック・メタルコアバンド Refluxの元メンバー トシン・アバシ[Tosin Abasi](Gr)による、アメリカはワシントン出身のインスト・プログレ・メタル・バンド アニマルズ・アズ・リーダーズのデビュー作。現在は4人編成のバンドになりましたが、このアルバムの制作時はトシン一人によるユニットであり、彼は全曲のギターとベーストラックを担当(ドラム&シンセトラックはサウンドエンジニアによるプログラミングによるもの)。トシンのキレキレなギターワークと変拍子がふんだんに組み込まれたシーケンシャルな楽曲はとことんまでねじくれたテンションで突き進んでいるのですが、ドラムンベース/エレクトロニカな要素や、各所に差し挟まれたクリーントーンによるアコースティックでつつましい楽曲が程よいクールダウンの役割を果たしているため、アルバムを通して押し付けがましさは全くなく、歯切れの良いなめらかなリズム感も相まってむしろしなやかな弾力性や爽快感を十二分に感じさせてくれます。マスロックのようにストイック過ぎず、プログレ・メタルのような暑苦しさも少ない、変態的なのに聴き心地は爽やかというバランスは実に興味深く、絶妙。この良いとこ取りのハイブリッドプログレサウンドはこれからの暑い時期に聴くにはうってつけでありましょう。

Animals As Leaders:Myspace
Animals As Leaders:Wikipedia

2010年6月27日日曜日

Emerson, Lake & Palmer 『BLACK MOON』(1992)

ブラック・ムーン(紙ジャケット仕様)
レイク&パーマー エマーソン
ビクターエンタテインメント (2010-06-23)
売り上げランキング: 542,055


 先日、遂に紙ジャケット化された、エマーソン、レイク&パーマーの92年作品。90年代の再結成後のEL&Pのアルバムは解散前の最終作『Love Beach』以上に語られてないような気がするんですが、過去の栄光がデカ過ぎるだけにまあそれも致し方ないのでしょうか。そういうわけでアルバムの存在が黒歴史扱い気味ですが、個人的には結構気に入っていて、今でもたまに聴きたくなります。映画劇伴作曲家のマーク・マンシーナのプロデュースの元制作された14年ぶりのオリジナルアルバムとなる本作は、キース、グレッグがソロ用に書き溜めていた楽曲に、書き下ろし新曲を加え構成。グレッグのヴォーカルに全盛期ほどの艶がなかったり (「Better Days」では途中で咳き込んでたりもする…さすがに演出? ってことはないよなあ)、捨て曲もいくつかあるものの、なかなか充実した内容になっています。

 不穏な空気、風雲急を告げるピアノ、ヘヴィなリズムの中厳めしいシンセが印象的な冒頭曲「Black Moon」に象徴されるように、冒頭数曲はモダンな重々しさを感じさせる仕上がり。ミドルテンポの曲調、颯爽と鳴り響くハーモニカ、ローリングするハモンド、そこにレイクのヴォーカルがドスンと決まる「Paper Blood」(頓挫に終わった、ASIAのジェフ・ダウンズとレイクのプロジェクト Ride the Tigerの「Money Talks」という曲のリメイク)は文句なしにカッコ良いナンバーだし、プロコフィエフの"ロメオとジュリエット"をEL&P風に料理した「Romeo and Juliet」は原曲のコミカルさを失っていない良アレンジ。グレッグのバラード「Farewell to Arms」「Burning Bridge」や、ジェフ・ダウンズと共作した「Affairs of the Heart」はしみじみとした味わいで、どちらも後半の盛り上がりがなかなか泣かせてくれます。そして本作のハイライトと言えるのが派手なインストナンバー「Changing States」。チャーチオルガンのイントロから煌びやかなファンファーレ調のシンセパッセージへと展開する躍動的なEmerson,Lake&Powell風インストで、エマーソンらしいエネルギッシュな勢いをたっぷりと感じさせてくれるのが堪らない。さあこれから盛り上がっていくか!?というところで寸止めを食らわされるような終盤のさっぱりした曲構成は少々残念ですが、ともあれ手堅い内容です。今回の紙ジャケット化で再評価されて欲しいですね。


「Black Moon」:Wikipedia
Emerson,Lake&Palmer:Wikipedia
Emerson,Lake&Palmer:公式

2010年6月24日木曜日

マンドレイク『アンリリースド・マテリアルズ Vol.1/Vol.2』

アンリリースト・マテリアルズ VOL.1
マンドレイク
テスラカイト (2006-02-02)
売り上げランキング: 50,379


 平沢進氏がP-MODELを結成する以前の73年から79年にかけて活動していたバンドであり、P-MODELへの基盤ともなったプログレッシヴ・ロック・バンド「マンドレイク」の音源集。軋みを上げる御大の硬質的なギター。エフェクトがかったヴォーカル、大々的にフィーチャーされるキーボード/メロトロン・サウンド。BLACK SABBATHやKING CRIMSONといったバンドからの影響を強く感じさせる不穏なヘヴィネスとシンフォニックな情緒。ほぼ全ての楽曲が10分オーヴァーという大作主義。何から何までバリバリの攻撃的スタンスで貫かれています。『Vol.1』『Vol.2』ともにスタジオ音源とライヴ音源で構成されているので音質の悪さは目立つものの、楽曲そのものの鬼気迫る勢いや、荒涼とした叙情性は非常に惹かれます。ギャリギャリと殺気立った荒々しい平沢氏のギタープレイで幕を開けるメタリックな凶暴さ際立つナンバー「飾り窓の出来事」、押し寄せるキーボード/メロトロンの洪水が荘厳な雰囲気を演出する「終末の果実」、KING CRIMSON的ヘヴィネスと、叙情味の滲むヴォーカル、構築的な楽曲展開がカタルシスを生む「MANDRAGORA」、淡々とした展開に乗せて乾いた叙情性を綴っていく「Tales From Pornographic Ocean」(タイトルはもちろんYESの"海洋地形学の物語(Tales from Topographic Oceans)"のもじり)は印象深い。


アンリリースト・マテリアルズ VOL.2
マンドレイク
テスラカイト (2006-02-02)
売り上げランキング: 23,989


 また、20分近い「錯乱の扉」では、後のP-MODELの楽曲「偉大なる頭脳」の断片的フレーズを聴くことができます。時代的にプログレが瀕死だったこともあって、結局「テクノ・ポップ・バンドP-MODEL」へと生まれ変わらざるを得なかったわけですが、例えこのまま行っていたとしてもここまで入れ込んだ徹頭徹尾なプログレ路線では行き詰まってただろうことは明らかでしょう。P-MODELへの大転換を遂げたというのはやはり見事というほかありません。『Vol.2』の最後に収録されている「いりよう蜂の誘惑」は、平沢氏がシンセサイザーを初めて触ってから4日かそこらで完成させたというシロモノながら、週刊プレイボーイ主催のシンセコンテストで、かの富田勲から絶賛の誉れを受け見事入賞したという楽曲。ページをめくるSEや鳩時計のSEから不気味なシンセのフレーズに突入し、ファンシーな中に一抹の不安と焦燥を感じさせる小品にして、若き平沢氏の才能の一端を垣間見ることができる秀作。そしてこの曲がキッカケとなり、79年のP-MODELデビューへと繋がってゆきます。ちなみに、MANDRAKEからP-MODELへの移行で音楽性は大幅に変わりはしたものの、それに際してメンバーの変更はほとんどなく、P-MODELの1st~2ndアルバムまでMANDRAKE時代のメンバー全員が参加しています。特にキーボードの田中靖美氏は初期P-MODELのサウンド面においてもかなりの手腕を発揮していたとか。MANDRAKEなくしてP-MODELあらず、興味深い音源集。





ちなみに「飾り窓の出来事」ですが、この曲は実は二つのパートに分かれた楽曲であり、アルバムに収録されているのはPart.2にあたるもの。アルバム未収録のPart.1はわずかに市場に出回ったという7インチシングルにPart.2と共に収録されており、これがまた非常にカッコいい疾走曲。




2010年6月23日水曜日

P-MODEL 全オリジナルアルバムレビュー 【後編】

御大:平沢進氏による、過去のP-MODEL作品からの楽曲をリメイクしたアルバム『突弦変異』がリリースされるということで、旧ブログに3年前に残したP-MODELのオリジナルアルバム関係のエントリをリサイクル、または書き足してまとめてみました。後編となる今回は、85年から99年のアルバムを。

【前編】
  http://camelletgo.blogspot.com/2010/06/P-MODEL-discography01.html


『KARKADOR』(1985)
カルカドル(紙ジャケット仕様)
P-MODEL
Sony Music Direct (2007-07-25)
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初期からバンドに携わってきた田井中貞利氏が脱退し、後任に荒木康弘氏(ALLERGY)が加入、さらに横川理彦氏(Ba.Violin.Vo/ AFTER DINNER/4-D)、を迎えての6thアルバム。オープニングとエンディングに配された「KARKADOR」「KARCADOR」での民族色も感じさせるフリーキーなヴァイオリンプレイが象徴するように、横川氏の加入によりバンドに奇妙なエッセンスが加わっております。「ダンス素凡夫」「Hourglass」におけるトロピカルな躍動感や、「OAR」のキャッチーな甘みなど、氏が関わった楽曲には明らかにこれまでのP-MODELになかったもので、それらの凝った味付けもひっくるめて予測不可能な動きを見せるテンションが見もの。インダストリアルなシーケンスを絡めて展開にメリハリを効かせた「1778-1985」、悠々とハイキングするかのような上昇的な曲調に象徴的な詞が連なり、小気味の良いドラムと共に絶品の気持ち良さを誇る「Cyborg」、ハッピーに盛り上がったり不気味に盛り下がったりとメロディにひねくれた趣向がクセになるポップナンバー「LEAK」と、平沢御大も負けじとインパクトのある楽曲を放っております。アルバムはこれといって捨て曲らしい捨て曲もなく、中期P-MODELでは『Another Game』と共にオススメしたい一枚。





『One Pattern』(1986)
ワン・パターン(紙ジャケット仕様)
P-MODEL
Sony Music Direct (2007-07-25)
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三浦氏、横川氏の両氏が脱退、高橋芳一氏(Systems)、中野照夫氏(Ba.Vo)を後任に迎えての7thアルバム。「Oh!Mama!」、中野氏作曲の「LOCORICE LEAF」で掴みはバッチリに始まるものの、楽曲の印象が団子状態になることが多く、文字通りワンパターンな構成になってて正直全曲聴き通すにはツライものがあるかも。P-MODELと平沢ソロを足して2で割ったような作風ですが、決め手に欠けるせいかバンドのネタ切れ/行き詰まりを感じざるを得ないです。とはいえ中盤の楽曲はなかなかで、歌唱が淡々とした演奏の中で映える「Zebra」(後の「夢の島思念公園」「地球ネコ」のベースとなった曲でありましょう)、エキセントリックとシニカルの狭間を行く「おやすみDog」、スカっとした華やかさのある「Another Day」でなんとか一矢報いてます。この後、田井中貞利氏が復帰、さらにキャラが立ちまくりの"キーボード妖怪"ことことぶき光氏が加わり、『MONSTER』というタイトルでアルバムを制作する予定だったそうですがオクラ入りになり、バンドは88年12月を以って、"凍結"と称して2年と数ヶ月の間、しばらく活動を休止します。




ちなみにそのオクラ入りとなったアルバム『MONSTER』の楽曲は、凍結前のラインナップ(平沢/中野/田井中/ことぶき)による演奏を収めたライヴビデオ『三界の人体地図』で聴く事ができます。「MONSTER A GO GO」は秀逸な1曲。



『P-MODEL』(1992) / 『big body』(1993)
ゴールデン☆ベスト P-MODEL「P-MODEL」&「big body」
P-MODEL
ユニバーサルJ (2004-09-08)
売り上げランキング: 2,772


P-MODELとして活動凍結中の間、平沢氏は3枚のソロアルバム(『時空の水』『サイエンスの幽霊』『Virtual Rabbit』)を発表するなど精力的に活動しており、決して停滞していたわけではありませんでした。そして満を持してのP-MODEL"解凍"。オリジナルメンバーである秋山勝彦氏が復帰、ドラムスには藤井ヤスチカ氏を迎え、メンバー全員が近未来SFに登場するような衣装を纏い、新生P-MODELとして再び華麗なるカムバックを果たします。バンドセルフタイトルを冠した『P-MODEL』そしてその1年後に発表された『big body』は、内実共にわかりやすい"テクノ・ポップ"を体現しており、ピコピコ&ポップなテクノ・ポップ・チューンが次から次へと飛んでくる様は圧巻。めくるめく平沢ワールドを展開する「Speed Tube」、さながら導師のごときたたずまいすら感じさせる平沢氏のヴォーカル、思わず口ずさみたくなるキャッチーなメロディの開放感が実に気持ちがいい「Wire Self」「Homo Gestalt」など、高揚感と疾走感に溢れた楽曲のオンパレードでありますが、ことぶき光氏が関わった楽曲は一際異彩を放っており、PVも強烈なインパクトを誇る「2D OR NOT 2D」や、「幼形成熟BOX」では眩いまでのピコピコサウンドが文字通り弾け跳んでおり、極めて中毒性が高い。一方で、秋山氏のいくつかの提供曲は対照的に静的なものですが、不思議な味のあるアクセントとなっており、秋山氏自らヴォーカルもとっている「BURNING BRAIN」はその最たる楽曲といえましょう。ちなみに、『P-MODEL』ラストに収録された「Psychoid」で楽曲が一旦終了してから数分後に流れる疾走曲は「No Room」といい、現在の公式サイトのタイトルにもなっています。初期P-MODELの作風を解釈し直したような楽曲で、「美術館で会った人だろ」のフレーズの登場にニヤリとさせられることウケアイ。『P-MODEL』『big body』の2枚は地続きの関係にあるので、是非一度に2枚聴いてほしいところ。この2枚を2in1でカップリングした『ゴールデン☆ベスト』はお値段手ごろながら今でも容易に入手することが可能です。第二の金字塔的作品。






『舟』(1995)
舟  (+3)
舟 (+3)
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P-MODEL
日本コロムビア (2011-09-21)
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またもやメンバー総入れ替え。福間創(System 1)、元DADA~4-Dの"和尚"小西健司(System 2)、GRASS VALLEYの上領亘(Algorithm)の3名が加入。小西氏は作詞のほか、アルバムの楽曲の半分の作曲を担当しております。ポップな方向性ではありますが、ピコピコギラギラしていた解凍後の前二作とは対照的に静的なイメージのテクノ/アンビエント色が増加、パレードのように楽しげなムードに満ちた「Welcome」や、壮大なイメージを喚起させる「3/4 (March 4th)」「Tide」など、随所に漂うエスニックでオリエンタルなムードは平沢氏のソロからの流れを強く感じさせます。「夢見る力に」は小西氏のポップセンスが光る佳曲。また、心地良い音の波にたゆたうアンビエント/ニューエイジな「Mirror Game」「HOME」など、耳触りの良い曲も。楽曲はどれもそつなくまとまっているのですが、方向性がいまひとつパッとしないので、アルバムとしては微妙な立ち位置にある作品です。






『電子悲劇/~ENOLA』(1997)
電子悲劇/~ENOLA (+6)
電子悲劇/~ENOLA (+6)
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P-MODEL
日本コロムビア (2011-09-21)
売り上げランキング: 15,543


上領氏が脱退し、平沢、小西、福間の3名によって制作された97年作品。"電子舟P-MODEL号"をコンセプトとしたストーリーに基づいた作品であり、『P-MODEL』『big body』の作風をさらにシリアスに寄せたような内容で、各人がそれぞれ3~4曲ずつ提供しております。前作発表後にリリースされた3枚のマキシシングル(『Rocket Shoot』『ASHURA CLOCK』『LAYER-GREEN』)の楽曲も収録。いきなり疾走感とダイナミックなコーラスがキマる「ENOLA」に象徴されるように、どの曲も一度聴いたら耳から離れなくなるほどに落としどころが明確で、語りどころは非常に多いです。福間氏がヴォーカルを披露し、ミステリアスな展開から平沢氏のヴォーカルを伴ったサビで一気に開けたときの爽快感たるや並々ならぬものがある「Bogy」。小西&平沢のデュエット(?)が聴ける胡散臭いエスニック・エレポップ「ENN」や、ガムラン調のイントロをフィーチャーした「Black in White」など、異国テイストも健在。荘厳な平沢ヴォーカルを存分に聴かせる「Rocket Shoot II」、のたくったバッキングシーケンスがデロデロとにぶい輝きを放ち、ギターも唸りを上げる疾走曲「ASHURA CLOCK (Discommunicator)」、平沢氏のソロからの作風を見事に昇華した感のある「LAYER-GREEN(ver.1.05 Gold)」と、シングル曲は若干のアレンジが加わっているものもありますがどれも強力で、キャラが立っております。ラストのインスト「A Strange Fruit」(小西氏作曲)だけ思いっきり他の曲と毛色が違う爽やかで可愛らしい曲で、"これもP-MODEL!?"と意表を突かれるのですが、ご愛嬌。とはいえ、三者の個性が鮮やかにバランスよく混在した、90年代後期P-MODEL随一の充実作なのは間違いありません。



『音楽産業廃棄物~P-MODEL OR DIE』(1999)
音楽産業廃棄物 〜P-MODEL OR DIE
P-MODEL
パイオニアLDC (1999-09-22)
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P-MODEL活動20周年記念プロジェクト「音楽産業廃棄物P-MODEL OR DIE」の一環でリリースされたアルバム。MP3配信のことを考え、楽曲は3MB~5MBの容量で収めるというコンパクトな作りで仕上げられ、「P-MODELの回収・再生」をテーマに掲げた作品。80年代P-MODELのニオイを感じさせつつ、ソロアルバムや解凍後の流れも汲んだ万遍のないサウンドはキャッチーで心地が良く、『Perspective』の「Heaven」の再解釈的ナンバー(?)「Heaven 2000」や、「論理空軍」「DUSToidよ歩行は快適か?」といったインパクトのある楽曲や、P-MODELにしては珍しい(?)泣きのメロディを織り込んだ「Mind Scape」もあるのですが、どうも縮小再生産的なイメージがつきまとってしまいます。アレンジもどこか画一的なので、微妙な企画アルバムという印象。音楽配信というコンセプトを考えると本作は意義深いと思いますが、音楽的には本作は節目としては今ひとつ締まらなかったのでは?本作発表後、P-MODELは「培養期」(つまり活動休止)に入ります。




【参考】
P-MODEL MEMBERS HISTORY
P-MODEL:Wikipedia
NO ROOM

2010年6月22日火曜日

P-MODEL 全オリジナルアルバムレビュー 【前編】

御大:平沢進氏による、過去のP-MODEL作品からの楽曲をリメイクしたアルバム『突弦変異』が23日にリリースされるということで、旧ブログに3年前に残したP-MODELのオリジナルアルバム関係のエントリをリサイクル、または書き足してまとめてみました。前編となる今回は79年から84年のアルバムまで。



『In A Model Room』(1979)
IN A MODEL ROOM (紙ジャケット仕様)
P-MODEL
SS RECORDINGS (2015-12-15)
売り上げランキング: 5,307


79年の記念すべきデビュー作。前身であるヘヴィ・プログレ・バンド:MANDRAKEのメンバー全員が、そのまま鞍替えする形でP-MODELに参加しています。KING CRIMSONとBLACK SABBATHを足し合わせたようなヘヴィなプログレを演っていたバンドとは思えないほどの華麗なる転身。基本はチープなピッコピコシンセが乱れ飛び、ナンセンスな言葉遊びやアイロニーを散りばめたパンキッシュなスタイルですが、アヴァンギャルドに片足突っ込んだような姿勢も時折見られるせいか、テクノ・ポップという言葉で片付けていいのかチト困る場面もあるのはやっぱり前身が前身だけにというところでしょうかね。「美術館で会った人だろ」「ヘルス・エンジェル」「サンシャイン・シティー」などの倒錯しつつも勢いで押し切るテクノパンクチューンや、淡々としたシーケンスにクセになるコーラスを交えた「子供たちどうも」「ホワイトシガレット」といった楽曲の中、異色なカラーを持っているのが、マンドレイク時代の楽曲のリメイクである「偉大なる頭脳」。"アタマの中のアタマにアタマの中のアタマが" "想いの前の想いに想いの前のよせあつめ"といった歌詞や歌い回しもさることながら、複雑にねじくれるギターワークやリズムが混乱を誘う佳曲。わずか2分で妙なインパクトを与えてくれます。プロデュースは佐久間正英氏、国内テクノ・ポップ/ニューウェーヴ・パンクの金字塔的1枚。






『ランドセル(LANDSALE)』(1980)
ランドセル(紙ジャケット仕様)
P-MODEL
インディーズ・メーカー (2003-11-20)
売り上げランキング: 131,688


「可能な限り大きな音でお聴きください」というブックレットの一文も印象的な2ndアルバム。ストリングスとピアノによるしっとりした1曲目「オハヨウ」にいきなり意表を突かれますが、それ以外はおおむね前作の流れを汲む作品。音質も向上したせいか、音がより立体的になりエキセントリックさやチープさは減少、前作と比較するとおおむねノーマルな路線のニューウェーヴ・ポップ/パンクに仕上がっています。しかし"ランドセル"と"売国"をかけたアルバムタイトルにも見られるように、相変わらず毒と皮肉と電波をしたたかに吐き散らしており、それは世間のアレコレだけでなく自バンドのファンに対しても及んでおります。シニカルでたっぷりコーティングしてある分、このスタンスはある意味厄介(笑)また、本作にもマンドレイク時代の楽曲が収められており、11曲目の「異邦人」がそれ。シンプルな中にねっとり異質な雰囲気を醸しています。



『Potpourri』(1981)
ポプリ
ポプリ
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P-MODEL
SS RECORDINGS (2015-12-15)
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べースの秋山勝彦氏が脱退し、平沢氏がベースも兼任する形でメンバー3人で制作された3rdアルバム。ギターの軋みやリズム隊の手数が増え、あっちこっちに跳ね回るアンサンブル、エコー、テープコラージュ、SEが入り混じった混沌とした趣向、トーンを落とした曲調、など、奇抜で強烈な路線へ急転換しています。半ば悪意としか思えない猟奇的ギミック、"躁"状態とでいうようなトびっぷりは聴いてて薄気味が悪いことこの上ない。シャウトにオルガンがのたうちまわる「ブループリント」、アンサンブルと一緒になってヴォーカルも自暴自棄となる「Different≠Anohter」、ヨーデルコーラスにテープコラージュが花盛りという「Another Smell」など、中盤はイクとこまでイってんじゃないかと思うほどキレており、徐々に本性をむき出していくかのよう。シンプルにすっ飛ばしていた1st、2ndと聴き比べると愕然とするギャップですが、あれこれ実験要素を放り込んでいるおかげで初期3作中では最もカオス。



『Perspective』(1982)
PERSPECTIVE (SHMCD)
P-MODEL
徳間ジャパンコミュニケーションズ (2015-07-15)
売り上げランキング: 392,039


秋山氏の後任ベーシストとして、平沢氏が当時講師を務めていたシンセサイザー教室の教え子だったという菊池達也氏が加入した、82年発表の4thアルバム。アヴァンギャルドな流れの中にありながら前3作の名残は全くと言っていいほど残っておらず、本作において展開される空間はまるで突然変異でポッと出来上がってしまったというか、そんなミステリアスなニュアンス。階段での残響を利用した奥行きと音圧のあるマシーナリーなドラムサウンド、そこにデロデロとうねりの入ったシーケンスを奏でるキーボード&ベースが絡みつき、平沢氏は抽象的な歌詞を切羽詰まったように歌い上げたり、刷り込むように囁いたりと、アンサンブルは重さの中にとことん醒めた不気味さを孕んでいます。シンプルなようでいて不安や切迫としたものをひしひしと感じる淡々としたメロディには、乾いた悪意が隠し味的に混じり込んでいるような印象もあり、「HEAVEN」「Solid Air」「のこりギリギリ」の3曲は特にそれが顕著に表れているのではないかと。ついてこれるヤツだけついてこいというミーハーお断りの突き放したスタンスが前作以上に極まった感があり、もはや孤高の境地。ちなみに本作は2007年にリマスターで再発されたのですが、そこにはボーナストラックとして『Perspective』の別テイクを収めたカセット『Perspective II』(これもオリジナルは82年リリース)の音源(全11トラック)が全て収録されています。



『Another Game』(1984)
Another Game(オリジナル帯復刻仕様)
P-MODEL
SS RECORDINGS (2013-09-10)
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田中靖美氏が脱退し、後任キーボーディストとして三浦俊一氏が加入した84年の5thアルバム。「Atom-Siberia」における歌詞の一部(奇形のエリア、不具の辻褄)がレコ倫に引っかかり発売が延期され、平沢氏が精神的にかなり参っていた時期の作品ということで、全体的に雰囲気が病んでます。やけに生々しく際立った底辺のベースサウンド、ダウナーな音作りのシンセを主体にして妙にサウンドがフワッと浮ついているから気味の悪さもたっぷり。幾分か自己セラピーのような曲もあります。「意識を集中して 世界と彼に関するこの礼儀正しいループを貴方の脳活動の中から探しだし、いついかなる場合にもそれを思い出せるようあなた自身のキーワードをつくってください」と、いきなり聴き手にマインドコントロールをかけてくるモノローグ「ANOTHER GAME」、ゾルっとしたシンセに躍動的なドラムの対比が妙味な「Atom-Siberia」、ひたすらフルヘッヘッヘで通し、異常なほど切羽詰った感を剥き出しにしていくヴォーカルが歌い手にも聴き手に緊張感を強いる「フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ」、シンセのフレーズにややクラフトワークからの影響が伺える「Floor」、残響するドラム、光明が差すかのようなシンセ、発信音(α波を誘発させる意図があるそうな)で心地よさを演出する「Awakening Sleep」、シド・バレット在籍時のPINK FLOYDナンバー「Bike」のカヴァーも不気味な色合いを発しながらもアルバムの一部として溶け込んでいます。どの楽曲も聴いてるうちに「もうこの場にはいたくない!」とでもいうような逃避感覚に襲われる問題作でありながら、ある種の傑作。自分は本作が彼らのディスコグラフィの中で一二を争うほどスキです。






『SCUBA』(1984/1989)
SCUBA P-MODEL
SCUBA P-MODEL
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P-MODEL
キャプテンレコード
売り上げランキング: 311,612


番外編的1枚。薄暗く躁鬱的な浮遊感に溢れた『Another Game』の同年に発表。当初はカセットブックでのリリースでしたが、89年にキャプテンレコードからCD版(それに際して若干の変更が加えられたとのこと)がリリースされております。バンド体制で制作されておらず (バンドメンバーでは三浦俊一氏しか参加しておりません)、サウンドよりもヴォーカルを押し出しているため、P-MODELというより「プレ平沢ソロアルバム」という趣の仕上がり。本作の「Frozen Beach」「Fish Song」の2曲は平沢氏のソロアルバムにも収録されています。タイトルやアレンジ、さざ波の音色で始まりそして終わるアルバムの構成など、至る所で意識的に海を連想させられるのですが、中でも先の2曲は音数の少ないシンプルなアレンジで雄大な海洋のイメージを抱かせてくれる良曲。曲調に反してシニカルな毒たっぷりという平沢流ポップセンスの光る「BOAT」「七節男」や、ややオリエンタルな味付けを施してユルユルな「オハヨウII」(『LANDSALE』収録「オハヨウ」の続編)など、番外編とは思えないほど面白い成り立ち。95年には楽曲に全面リ・アレンジを加え、さらにブックレットが改訂された(平沢氏ががアルバム制作中に見た夢の記録がそこには綴られております)『SCUBA Recycle』がリリースされています。


【後編】⇒ http://camelletgo.blogspot.com/2010/06/P-MODEL-discography02.html


【参考】
P-MODEL MEMBERS HISTORY
P-MODEL:Wikipedia
NO ROOM

2010年6月20日日曜日

Sadesper Record 『はなまるなベストアルバム Childhood Memories』(2010)

はなまるなベストアルバム  childhood memoriesはなまるなベストアルバム childhood memories
(2010/03/31)
TVサントラ、土田先生(日野聡) 他

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 今年の1月から3月にかけて放送された、アニメ版「はなまる幼稚園」のサウンドトラック。主題歌集のDISC-1と、本編の劇伴を収録したDISC-2の2枚組。主題歌/劇伴作曲を担当したSadesper Recordは、元Satanic Hell Slaughter~Melt-Bananaの大島昌樹ことWATCHMAN氏と、COALTAR OF THE DEEPERSのNARASAKI氏のふたりによるユニット。NARASAKI氏にとって純粋なアニメサントラ仕事としては2003年のOVA版アクエリアンエイジ以来。アニメ劇伴(それもほのぼの系)にデスメタル/ノイズ/シューゲイザー畑からの人員起用というのは一見すると凄まじいギャップを感じますが、この二人にオファーを持ちかけた水島精二監督にグッジョブと言わせていただきます。

 実際の本編楽曲はチャイルディッシュかつファンシーで非常にほのぼのとしたムードとソフトなサウンドに彩られた楽曲ばかりで、非常に癒されます(ちなみにWATCHMAN氏は原作漫画の大ファンだとか)。サウンドトラックサイドはおとなしい内容ですが、各エピソードごとに用意されたエンディング曲を全て収録した主題歌サイドは各人の持ち味を発揮した内容になっています。NARASAKI氏は得意のシューゲイザーを皮切りに、ネオアコ、テクノポップ、ジャズ、フォークと多彩な曲調で10曲提供。「笑顔ならべて」「発動!! らぶビーム☆」など、NARASAKI氏のポップセンスはロリ声と凄まじく相性が良いし、甘酸っぱく仕立て上げられたシューゲイザー「黒糖ドロップ」(コメントで4ADレーベルに言及しているあたり、タイトルはコクトーツインズに引っ掛けた?)や、シンプルながら味わい深い"80's和風ニューウェイヴ細野風味"オリエンタル・エレポップ「撫子ロマンス」は珠玉。林正樹氏や小野研二氏といったジャズ畑のミュージシャン揃いの「黒ネコのジャズ」もムード十分。また、カントリー・フォーク調の「草の指輪 花の冠」でギターを弾いているのが俊英女性ギタリストであるKAKI KINGでビックリ。ギターを録ってもらうためにニューヨークに飛んだというNARASAKI氏のこだわりには頭が下がります。WATCHMAN氏はエレクトロニカをベースとした楽曲を4曲提供。ドリーミーな甘口トイトロニカ「あのねきいてね」、痛快に爆走するエレクトロ・デジロック「ハートの法則」、ギラギラした音の粒が派手に弾ける「Yes We Can!!」(ちなみにこの曲、WATCHMAN氏のソロアルバムの作風に近いものがあります)、トドメには脳みそを良い感じにペースト状にしてくれるお遊戯歌「ぱんだねこ体操」。ある種の極めつけです。

ところで、第2話のED曲「キグルミ惑星」のみ、コジマミノリという方による楽曲なのですが、これがまた強烈。プログレ調スペース・ロック・オペラという壮大な曲想(心なしか90年代後期の筋肉少女帯っぽくも感じる)がぶっ飛びまくってて素敵です。ギターに橘高文彦(筋肉少女帯)、ベースに村井研次郎(cali≠gari)、ドラムスに下田武男(WHITE FANG)というバックのメンツにも驚かされますが、ロリ声とオペラティックなハイトーンで交互に歌い上げる高垣彩陽嬢の存在感が殊のほか素晴らしい。7分近くあるという大曲ですが、コジマさん曰くそれでも大分削ってこの形になったとのことで、なんともはや。


はなまる幼稚園:Wikipedia
NARASAKI:Wikipedia
WATCHMAN:Official

2010年6月18日金曜日

ジギタリス『Ars Magna ~大いなる作業~』(2010)

Ars Magna(アルス・マグナ)~大いなる作業~
ジギタリス
SMD (2010-05-12)
売り上げランキング: 250,057


 近年はガストの《アトリエ》シリーズの主題歌を担当していることでも注目を集めている、山本美禰子嬢を中心とした4人組バンド ジギタリス。主題歌担当の縁からか、ティームエンタテインメントからのリリースとなった約3年ぶりとなる新作3rdアルバム。前作『SYZYGIA』(相対する一対のもの)同様、本作もコンセプト作品になっており、"錬金術"をテーマとした楽曲を展開。シェイクスピアやリルケ、ゲーテといった詩人や作家、果てはユング、ル=グィン、北欧神話、チベット密教からの引用を散りばめ、さらに公式サイト上でコンセプト/ストーリーのページを設けるなど、世界観の掘り下げへの力の入りようが伺えます。

 その幻想的な詩世界を歌い上げる、ケイト・ブッシュ、はたまた"歌のお姉さん"的な山本嬢の表現豊かなヴォーカル、アルペジオを軸とした軽やかなギター・ロック/空間的ポスト・ロック・サウンドは、これまで以上に壮大となったアルバムコンセプトに共鳴するかのようにひとまわり大きな洗練を遂げております。ライトでありながら鋭角的なドライヴ感溢れるバンドアンサンブルと颯爽としたヴォーカルが加速する「アルケミスト」「青い太陽」「幻想ヴァルキュリア」。アレンジは程よくシンフォニックな程度に留めているのがやはり肉感的なロックバンドという印象を改めて感じさせてくれます。「ウロボロス」「問い-言葉無き叫び-」は、多重コーラスのハーモニーやハイトーンが吸い込まれるほどに美しい。ケイト・ブッシュ由来の感極まったような歌い回しもやはり強烈です。アカペラを中心とした小品「sephira」も、THE ECCENTRIC OPERAをフェイバリットに挙げている彼女たちらしい1曲。また、「ラピスラズリ-黒い石の夢-」「真の名前」のようなシンプルな構成の楽曲ほどアルバムの世界へと深く誘う神秘性や魔力が強まるように思うのは、ひとえに山本嬢のヴォーカルに因るところがやはり大きいのでしょう。確かな歩みを続けるバンドの姿を十二分に見ることができる、サウンド、コンセプト共にしっかりとした骨子を持った上でどっぷりとファンタジーにこだわった秀作。




ジギタリス:Myspace
ジギタリス:公式

ジギタリス『SYZYGIA』(2007)

SYZYGIA
SYZYGIA
posted with amazlet at 15.12.31
ジギタリス
ノーマディックレコード (2007-10-10)
売り上げランキング: 245,537


紅一点の山本美禰子(Vo.Gr)を中心とする4人組バンド ジギタリスの2ndアルバム。バンドサウンドはトリッキーなキメやフレーズをサラリとこなすいかにも現代的なギターロックといった颯爽とした感触ですが、一方でヴォーカルは民族的なニュアンスも幾分か感じられる芯の通った歌唱を展開。たおやかさや伸びやかさは遊佐未森やみとせのりこを彷彿とさせられますが、「Myrninerest」「一角獣と少女-pieta-」で見せるクセの強い歌い回しは非常ににケイト・ブッシュ的であり、その小悪魔的歌唱がバンドの音楽性に結構なアクセントを与えています。肉感的なロックサウンドの中で堂々たる伸びやかな歌心を発揮する「青い樹」「MEMORANDA」のような楽曲はなかなかに鮮烈で、アルバムのテーマである「SYZYGIA」(シュジュギア:相対する一対のもの)に上手く繋がっているなあと思います。サウンドもさることながら、詞も幻想ファンタジー然とした世界観を展開し独特のミステリアスな雰囲気作りに貢献しており、バンドの魅力はそこでも見出すことが可能。敷居は高いかと思いましたが、結構とっつきやすくて好印象でした。




ジギタリス:Myspace
ジギタリス:公式

2010年6月17日木曜日

Cecile Corbel『Songbook Vol.1』『Songbook Vol.2』(2006/2008)

SongBooK 1(国内盤限定ボーナストラック収録)
セシル・コルベル
ヤマハミュージックコミュニケーションズ (2010-07-07)
売り上げランキング: 106,637


 今年夏に公開されるスタジオ・ジブリ制作の映画「借りぐらしのアリエッティ」の主題歌に抜擢され注目を浴びている、フランスはブルターニュ出身の女性ハーピストにしてシンガー  セシル・コルベルが2006年に発表した2ndアルバム。ハープ弾き語りシンガーというと、近年ではアメリカのジョアンナ・ニューサムの名前が挙がりますが、インディー・ポップス寄りの存在であるあちらに対し、こちらはより土着のトラッドに根ざした存在。ややあどけなさの残るコケティッシュな歌声は、セシルの公式サイトではケイト・ブッシュやシネイド・オコナー、エンヤが引き合いに出されていますが、むしろ印象としてはロリーナ・マッケニット、マギー・ライリー、カーラ・ディロンあたりがより近いという感じもします。12曲中8曲がトラディショナル・ナンバーのアレンジで、残りがセシル自身の作曲による楽曲で構成。ケルティック・ハープを前面に押し出しつつ、ヴィオラやチェロ、コラ(リュート型楽器)を絡めたアコースティック主体のアンサンブルで躍動感溢れる現代的なアレンジがなされており、全体的に古臭さを感じさせないフレッシュな仕上がりになっています。軽快に歌い上げられる「Suil A Ruin」、ささやかながらも効果的なストリングスアレンジが引き立てる「Auchindoun」「Blackbird」も印象的ですが、つまびかれる素朴なハープの音色を味わえる「Valse Des Ondines (2006 Version)」で迎えるラストも素晴らしい。素朴な味わいのアコースティックなトラッド・ポップスを求めるなら本作でしょう。






SongBooK vol.2(国内盤限定ボーナストラック収録)
セシル・コルベル
ヤマハミュージックコミュニケーションズ (2010-07-07)
売り上げランキング: 86,754


 2008年発表の3rdアルバム『Songbook Vol.2』では、トラディショナルなナンバー以上にセシル自身による楽曲がぐっと増え(12曲中8曲)、エレクトリック・ギターやハープシコード、サックス、バグパイプ、ホイッスルなど、楽器隊の使用楽器類が増えたことによりアレンジがより色彩豊かになっています。何より、狂おしいまでに哀愁を漂わせるドラマティックな曲調の楽曲が多いのがポイントでありましょう。「En La May」「Lover's Farewell」はロック的なダイナミズムを感じさせる楽曲で、特に後者は男性ヴォーカリストのジミー・オニールとのデュエット曲となっており、ストリングスを存分にフィーチャーした壮大なアレンジのバラードは、シンフォニックなフォーク・ロックといっても差し支えないほど。バグパイプが高らかに鳴り響き広大なイメージを喚起させる「The Great Selkie」や、アンサンブルの充実ぶりが伺えるインストゥルメンタル「Innocence」も聴きものです。もちろん、彼女の甘いヴォーカルを存分に生かした楽曲も充実しており、「Painted Veil」「I See The Great Mountains」などはストレートに魅力が伝わる佳曲。アンサンブルが一転してヴォーカルの引き立てに徹しているのがまた素晴らしい。壮大でドラマティックな方向性と盛りだくさんなヴォリュームを求めるなら本作をオススメいたします。ちなみに、先ごろ4枚目のソロアルバム 兼 アリエッティのイメージ歌集として『借りぐらし』がリリースされました。また、ソングブックVol.1、Vol.2共に、ボーナス・トラック入りの国内盤が7月7日にリリース予定とのことです。




http://www.cecile-corbel.com/

2010年6月13日日曜日

LIGHT BRINGER『Midnight Circus』(2010)

Midnight Circus(ミッドナイト・サーカス)
LIGHT BRINGER(ライトブリンガー)
Lovely Rock Records / Vithmicstar (2010-05-29)
売り上げランキング: 164,776


紅一点のヴォーカリスト Fuki擁する若手プログレッシヴ・ハード・ロック・バンド ライトブリンガーの、昨年6月のデビューアルバム『Tales of Almanac』からほぼ1年の期間を経てリリースされた2ndアルバム。全9曲のうち、ボーナス・トラックを含む3曲(「Le Cirque de Minuit」「Lazy Maze」「Hearn's Heaven」)は08年に自主制作された両A面シングルの楽曲や、07年に参加したスプリット・アルバムへの提供曲の強化版リメイク(うち「Hearn's Heaven」は前作にも収録されており、これで都合2度目のリメイクか?)、残りは新曲という構成。SIAM SHADEや陰陽座やALHAMBRAといった先輩格バンドからの影響もさることながら、80~90年代J-POP(プリンセスプリンセスやレベッカ、ビーイング系など)やアニソンからの影響も色濃いメロディック・プログレハードなサウンドは録音環境も含めて格段にグレードアップしており、メジャーバンドばりの貫禄すら感じさせます。とりわけFuki嬢の声量とパフォーマンスのさらなる向上ぶりには目を見張るものがあり、開幕のインストから続くオープニングナンバー「Resistance」や、リメイク版「Le Cirque de Minuit」「Lazy Maze」では陰陽座の黒猫ばりに凄みと大仰さを含んだ声で歌い上げ、伸びやかさも相まって非常に象徴的。小気味の良い疾走インスト「IT'S SHOWDOWN」で楽器隊の安定感あるパフォーマンスの健在ぶりもアピールしつつ、キャッチーさを信条とするバンドのスタンスを存分に発揮した「今にも落ちてきそうな空の下で」「Hearn's Heaven」は、時代が時代ならタイアップをぶんどれそうな、良い意味であざとい懐かしの90年代臭たっぷりな歌謡ハード・ロック。続く7分半の大曲「Dream!」も、ジュヴナイルな歌詞もさることながら、眩しいくらいに溌剌としたサビが90年代アニソンそのもの。さらに中盤からは男性ヴォーカル(たぶんギターのKazu氏)も加わり、終盤ではパッヘルベルのカノンのフレーズが流れ、ダメ押しに前作の「We're All In This Together」のサビのワンフレーズ("君の夢は逃げやしないよ")も出てくるという心ニクイ趣向を見せつつ大団円を迎えるという清清しいくらいにやり切った感満載な盛り上がりっぷりはまさにハイライト。「二枚目のジンクス」という言葉があるように、バンドにとって2枚目のアルバムは勝負との1枚とよく言われますが、曲数を絞って焦点をよりハッキリとさせた本作はスキのない見事な1枚。目を見張る急成長ぶりもさることながら、"ポストALHAMBRA"に留まらないバンドのアイデンティティを見せ付けた快作だと思います。全力でオススメ。




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2010年6月12日土曜日

LIGHT BRINGER『Tales of Almanac』(2009)

Tales of Almanac(テイルズ・オブ・アルマナック)
LIGHT BRINGER(ライトブリンガー)
LIGHT BRINGER (2009-06-13)
売り上げランキング: 39,004


DRAGON GUARDIAN『DRAGONVARIUS』にも参加していたFuki(Vo)、Hibiki(Ba/ALHAMBRA)の二人も在籍している6人組プログレッシヴ・ハード・ロック・バンド ライトブリンガーの1stフルアルバム。『DRAGONVARIUS』は勇者アーサー氏の気張りっぷりがダイレクトに反映されたゆえか凄まじく濃ゆい仕上がりでしたが、このライトブリンガーはあちらとは対照的にソフトかつ爽やかな路線。音楽性の根幹の部分はドラガーと似たようなものなのですが、絶妙なバランス感覚でもって料理されたメロディックなプログレハードロックサウンドを展開しております。各メンバーがSYMPHONY XやGALNERYUSといった各種メタルバンドの他に、WANDSやDEEN、SIAM SHADE、Sound Horizon等をフェイバリットに挙げているだけあって、80~90年代J-POPやアニソン由来のポップネスにピリッとしたプログレハード的な要素が程良く溶け込んだサウンドが非常に好感触。

 1曲目の「Diamond」からストレートに切り拓くようなメロディが全開で、フレッシュなコーラスで爽やかに歌い上げられる「We're All In This Together」や、往年のビーイングのような必殺モノのイントロを持った「In Disguise」など、モロに90年代J-POPを彷彿とさせられる楽曲のオンパレード。アイデアを詰め込みながらもツボを押さえたキャッチーさに焦点を絞って楽曲を聴かせてくる潔さは見事というほかありません。紅一点のFuki嬢の歌い回しは多少芝居がかった印象も感じさせますが、そこまでクドさはなく、むしろ伸びやかなヴォーカルを十二分に生かしてバンドのサウンドとバッチリ噛み合わせており、突き抜けぶりに拍車をかけております。中でもミドルテンポの「Closed Sister~雪待月の妹~」は秀逸。スピードチューンもスロウ~ミドルバラードもイケるソツのないオールラウンダーぶりには好みが分かれそうなところですが、プログレハード的サウンドメイキングにはALHAMBRAを彷彿とさせられる部分が多く、本家メンバーのHibiki氏がいるということを抜きにしても"ポストALHAMBRA"のポジションに納まる素質十分だと個人的に思いますし、今後の発展が非常に気になるバンドのひとつであります。

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2010年6月4日金曜日

FANG ISLAND『Fang Island』(2010)

Fang Island


アメリカ・ブルックリンの5人組インディーロックバンド ファング・アイランドの、2枚のEPを経て満を持してリリースされた1stフルアルバム。リリース元はTERA MELOSやザックヒルも所属しているSARGENT HOUSE。音楽性はポスト・ロック/マス・ロック、ハード・ロック、パンク、プログレをこれでもかとつぎ込んだ、ハイブリッドというよりもラフなゴッタ煮感溢れるオルタナティヴ・ロック。浮遊感たっぷりの音響的趣向やチップチューン的なピコピコとしたシンセの飛び道具的エッセンスも随所に交えつつ、空間を覆い尽くしてブーストするギターサウンドと、ヘヴンリーでブ厚いコーラスワークをふんだんにフィーチャーしてさらに拍車をかけ、非常にやかましくも愉快なカタルシス直結型サウンドをぶっ放しており、弾ける汗となんとやらというか、非常に青春しているイメージを想起させられます。どの楽曲も暑苦しさと若々しさのブレンド具合が絶妙。多幸感溢れるコーラスから変則的なリフへと鮮やかに流れる「Dreams Of Dreams」や、ダイナミックにドライヴするハード・ロックへと昇華させた「Daisy」で切り込んだかと思うと、「Life Coach」「Sideswiper」のようなレトロでカラフルなプログレ感覚の強い楽曲を立て続けに展開し、夢心地のままラストまで持っていきます。濃縮された音楽性と、30分ちょっとというアルバムのヴォリュームという釣り合いもGOOD。えもいわれぬ雰囲気に満ち満ちている面白おかしいPVもある意味必見です(一方では幼稚園で多数の園児達を前に演奏している微笑ましい動画も)。ジャンクフードみたいな魅力を見出せる、やたらと即効性のある1枚。




FANG ISLAND:myspace
FANG ISLAND:Wikipedia