2009年8月6日木曜日

GRAPEVINE『TWANGS』(2009)

Twangs
Twangs
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GRAPEVINE
ポニーキャニオン (2009-07-15)
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 アメリカへのライヴ遠征をレコーディングの間に挟み完成した、グレイプバインの10thアルバム。前作『Sing』、前々作『From a smalltown』はわりあいストレートさを感じさせるアルバムだったように思いますが、本作はひねくれ、気だるさ、その他色々なものが詰まっています。一聴した感じでは'03年の『イデアの水槽』のプログレッシヴなムード、'05年の『Deracine』の内省的な作風を織り交ぜたようにも思えますが、何度も聴いているとそれだけにはとどまらない諸々の要素が所々から顔をのぞかせるようになってくる。恐らく全編から滲み出している60~70'sのブリティッシュロック的なサイケデリック&ブルージーなニュアンスに因るところが大きいのでしょう。また、渡米前に前半曲を録り、渡米後に後半曲を録ったというズバッと大胆なレコーディングプロセスを経たことも、本作の雑多寸前のバラエティの豊かさを生み出した一因だと思います(向こうのオーディエンスを意識した楽曲作りも念頭に置いていたのかもしれませんね)。





 オルガンやメロトロン、スティールギターやストリングスのフィーチャー度がいつになく高いのも聴き逃せません。シングルカットもされた1曲目の「疾走」は本作を象徴するナンバーでもあり、楽曲自体のテンションの高さもさることながら、サビの前後でじんわりと力強さを与えるように鳴り響くメロトロンサウンドが堪らない。バンドにとって初めてとなる全編英語詞で仕上げられた「Vex」や、アコースティック弾き語りのタイトル曲「Twangs」におけるストリングスの溶け込み具合は実にさりげないし、ゆるやかな流れながらも起伏に富んだ展開を7分間に渡って聴かせる「Pity on the boulveard」は、元々アルバムの1曲目にするはずだったそうで、幾重にも折り重ねる厚みを帯びたバッキングにとろけるようなスティールギターの音色がよく馴染む、これまたアルバムを象徴するシンフォニックな力作。「Turd and swine」の乾いたドライヴ感、シンプルながらもグッとくる詞で聴かせる「小宇宙」、言葉遊びのような詞、日本語と英語の境界線をうろついているかのような田中氏の歌い回し、フィードバックでぐわんぐわんに揺れる中、端々から感じさせるひねくれっぷりにある種の小気味良さすら感じさせる「NOS」、ファニーにファズったギターや、淡いメロトロンが親しみやすさすら覚えるレトロなムードを醸し出す、〆の「She comes(in colors)」など、本作は溢れんばかりの自由度の高さで華やかな色合いが出ており、まだまだ尽きることない彼らの飽くなき向上心や意欲的な伸びしろをたっぷりと感じられるのではないでしょうか。