2007年9月8日土曜日

筋肉少女帯『新人』(2007)

新人
新人
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筋肉少女帯
トイズファクトリー (2007-09-05)
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 1999年の解散から実に8年の歳月を経て再結成を果たした筋肉少女帯の、1997年発表の『最後の聖戦』以来10年ぶりとなる、通産13作目のオリジナルアルバム。浅田弘幸氏によるジャケのゴスロリ少女はオーケンの小説「ロッキン・ホース・バレリーナ」に登場する七曲町子嬢。太田明氏(ds)は事情により今回参加が見送られたため、UNDERGROUND SEARCHLIE(以下UGS)や、橘高文彦&EUPHORIAにも参加されていたセッションドラマーの湊雅史氏、THE ALFEE~ExhiVisionの長谷川浩二氏、THE MOONBEAMの矢野一成氏の3名がサポートメンバーとして叩いております。初期メンバーの三柴理氏(pf)もサポートメンバー扱いですが、正式メンバーの一人と言って良いほどの活躍ぶりを見せており、何だか嬉しい限り。その他、オーケンのアンプラグドセッションより朝倉真司氏(perc)、長井千恵嬢(cho)、EUPHORIAより泰野猛行氏(kbd)が参加。

 メンバーもオーケンも随分丸くなった印象はありますが、やっぱりこの人たちは良い意味でどこまでもB級路線。オーケンが数々の活動(ソロ~UGS~特撮)を経たことで個性の幅もグッと広がったなと思います。三柴氏のピアノ独奏による「Period」から、本作の重要キーワード「仲直り」をテーマにしたストレートなナンバー「仲直りのテーマ」(作詞・作曲はもちろんオーケン)でまず一発景気よくかましてくれます。3曲のリメイクのうち、「イワンのばか'07」はオリジナルの身を削るような荒々しさが減退し、若干明るめになったかなと言う印象。実験プロジェクト UGSが生み出した屈指の名曲のリメイク「Guru 最終形」は、オリジナルの終盤で聴けた壮絶な語りの部分はなくなっていたのが残念ですが、ほろほろと崩れるように繊細で切なげなメロディラインは依然として白眉。雪崩れ込みプログレッシヴ・パンク「モーレツア太郎'07」はアルバム『仏陀L』と同様、イントロダクションの「黎明」としっかりセットになっており、古くからのファンには嬉しい趣向。絞り出すようなテンションの高さも頑張って再現しており、今回のリメイク曲では一番の好印象でした。詞の内容は今聴いてもトンがってるなあと再認識。





 しかしやはりこれらはあくまでファンサービス、語るべきはやっぱり久々となるオリジナル曲でしょう。ジョン・ウィンダムの破滅SF小説『トリフィド時代―食人植物の恐怖』をモチーフにしたセカイ系の詞が何ともオーケンらしい「トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く」は、かつての「小さな恋のメロディ」「機械」「僕の歌を全て君にやる」といった後期筋少の流れを受け継ぐ劇的なスピードメタルチューン。筋少史上最速とも言える気合の入ったハイスピードな演奏を繰り広げる「ヘドバン発電所」と共に、筋少の新しいキラーチューンとなるにふさわしいナンバーではないでしょうか。また、「生きてあげようかな」を思わせる、本城氏作曲の「その後 or 続き」は、再編を果たした今だからこそより味わいを感じるナンバーだなあと。威勢のいいコーラスが飛び交う特撮テイストに溢れた「未使用引換券」。サビが一際キャッチーに決まる「愛を撃ち殺せ!」。チープに抜けるオルガンサウンドにベンチャーズ風のフレーズが乗る、「俺の罪」を思い起こさせる内田氏らしいユルいナンバー「抜け忍」。KISSの「Love Gun」風のリフに淡いピアノのアクセントが交錯する「交渉人とロザリア」など、捨て曲は一切なし。発売前の不安が全て杞憂に終わるほどの大健闘ぶりを見せてくれました。最後はバンド再結成を自虐ネタにした「新人バンドのテーマ」で和気藹々とした雰囲気で幕。目の付け所とオチをしっかりつけるあたりは流石オーケンだなと(笑)。再結成一発目としてはこれ以上ないほどの充実した作品に仕上がっています。